えるぼし認定の5基準、自社はどこで落ちるか|基準別の計算方法と2026年改正後の考え方
2026年 9月 10日

えるぼし認定の申請を検討し始めると、最初に必要になるのは制度の説明ではなく、自社の数字です。5つの基準のうち、いま何個満たしているのか。満たしていない基準は、あと何ポイント足りないのか。この記事では、えるぼし認定の基準を自社の人事データでどう計算するか、産業平均値をどう読むか、そして2026年4月の改正で何が変わったかを、申請の準備をする担当者向けにまとめました。制度の全体像は「えるぼし認定とは?3段階の基準・プラチナえるぼしの違いを解説」にあるので、ここでは計算と判断に絞ります。
多くの企業が引っかかるのは「管理職比率」と「労働時間」
5つの基準のうち、採用と多様なキャリアコースは、実績さえ整理すれば比較的満たしやすい基準です。継続就業も、勤続年数の比率で見る方法と継続雇用割合で見る方法のどちらかを選べます。
つまずきやすいのは残りの2つです。管理職比率は、女性管理職の割合が産業平均以上であることを求めます。管理職の数そのものが少ない企業では、1人の登用で比率が大きく動く一方、その1人がいなければ何年も平均を下回り続けます。労働時間は、法定時間外労働と法定休日労働の合計が、前年度のすべての月で平均45時間未満であることが条件です。繁忙期のある業種では、年平均では余裕があっても1か月だけ超えて基準を落とす、というケースが珍しくありません。
段階の決まり方は単純で、5つのうち1〜2つを満たせば1段階目、3〜4つで2段階目、5つすべてで3段階目です。したがって、どの基準で落ちるかを先に把握しておけば、今年は2段階目を取り、来年に3段階目を狙う、という計画が立てられます。
えるぼし認定の基準の計算方法と、必要な人事データ
基準ごとに、何を計算し、何と比べるかを整理します。いずれも都道府県労働局への申請時に根拠資料が必要になるため、計算に使ったデータの出所を残しておいてください。
| 基準 | 計算するもの | 満たす条件 | 必要なデータ |
|---|---|---|---|
| 1 採用 | 男女別の採用競争倍率(応募者数÷採用者数)、または正社員と基幹的雇用管理区分に占める女性割合 | 直近3事業年度平均で「女性の競争倍率×0.8」が男性の競争倍率以下、または女性割合が産業平均値以上(4割以上でも可) | 雇用管理区分別・男女別の応募者数と採用者数、正社員の男女別人数 |
| 2 継続就業 | 女性と男性の平均勤続年数の比、または新卒採用者のうち10年前後在籍している割合の男女比 | 勤続年数比が雇用管理区分ごとに0.7以上、または継続雇用割合の比が0.8以上 | 雇用管理区分別・男女別の勤続年数、採用年度別の在籍者数 |
| 3 労働時間等の働き方 | 労働者1人あたりの法定時間外労働と法定休日労働の合計時間の月平均 | 前年度の各月すべてで45時間未満 | 月別・雇用管理区分別の時間外・休日労働時間 |
| 4 管理職比率 | 管理職に占める女性の割合、または課長級の一つ下の職階から課長級に昇進した割合の男女比 | 女性管理職割合が産業平均値以上(上限4割)、または直近3事業年度の昇進率の比が0.8以上 | 職階別・男女別の人数、年度ごとの昇進者数 |
| 5 多様なキャリアコース | 直近3事業年度の実績の有無 | 非正社員から正社員への転換、キャリアアップに資する雇用管理区分間の転換、再雇用、おおむね30歳以上の女性の正社員採用のうち、大企業は2項目以上、中小企業は1項目以上 | 該当者の人数と年度 |
実際の認定例を見ると、計算の感覚がつかめます。長崎労働局が2025年7月に公表した建設業の認定例(従業員61名、うち女性12名)では、正社員に占める女性割合16.7%に対して産業平均値は14.4%、女性管理職割合20.0%に対して産業平均値は3.9%でした。継続就業は総合職の勤続年数比が0.79、労働時間はすべての月で45時間未満、キャリアコースは正社員への転換と30歳以上の女性の中途採用がそれぞれ1名です。これで5基準すべてを満たし、3段階目の認定を受けています。管理職が数名の規模でも、女性管理職1名の登用が比率を大きく動かすことがわかります。
産業平均値の読み方
採用と管理職比率の基準で比較対象になる産業平均値は、厚生労働省が毎年公表し、7月1日から翌年6月30日まで適用されます。産業大分類ごとに、正社員に占める女性割合、基幹的雇用管理区分の女性割合、管理職に占める女性割合などが示されます。
読むときに気をつけたいことが3つあります。平均値は毎年更新されるので、昨年の数字で判断すると今年は満たさない、ということが起こります。申請時点で適用されている値を確認してください。次に、自社の産業分類を取り違えないこと。製造業の中でも業種によって女性割合は大きく違いますが、比較対象はあくまで産業大分類の平均です。そして管理職比率の平均値には4割の上限があるため、女性比率が高い産業でも4割を超える必要はありません。
なお、平均値の最新の数値は、厚生労働省の女性活躍推進法特集ページで確認できます。この記事では数値そのものを載せていません。毎年変わる数字を固定して載せると、読んだ時点で古くなっているためです。
2026年の改正で変わった4つのこと
2025年6月11日に公布された改正女性活躍推進法により、えるぼし認定の周辺で次の変更がありました。
- 1段階目の認定基準が緩和された(2026年4月1日以降の申請から)。 基準を満たしていなくても実績が2年連続で改善していれば満たすとみなす仕組みについて、単年度の実績だけでなく、直近3事業年度の平均値の推移で改善を判定できるようになりました。実績が年によって振れる中小企業には使いやすい変更です。
- えるぼしプラス・プラチナえるぼしプラスが新設された(2026年4月1日)。 女性特有の健康課題への配慮に関する4つの基準を満たした企業への上位区分です。休暇制度と柔軟な働き方の制度、方針の周知、研修などの理解促進、相談担当者の選任が求められます。詳細は「えるぼしプラスとは?2026年創設の4基準・プラチナえるぼしプラスとの違いを解説」で扱っています。
- プラチナえるぼしに、求職者等に対するセクシュアルハラスメント防止措置の内容を公表していることが要件として追加される。 施行日は公布から1年6か月以内に政令で定める日で、遅くとも2026年12月までです。すでにプラチナえるぼしを取得している企業も、維持のために対応が必要になります。
- 101人以上の企業に、女性管理職比率と男女間賃金差異の公表が義務化された(2026年4月1日)。 えるぼし認定は評価項目の実績を毎年公表していることが申請の前提なので、公表義務への対応と認定の準備は同じ作業として進められます。改正の全体は「女性活躍推進法改正2026|公表義務拡大(101人以上)と企業の実務対応」、賃金差異の算出は「男女間賃金差異の計算方法|実務担当者向けガイド」を参照してください。
厚生労働省の公表値では、令和6年3月末時点でえるぼし認定は2,716社、プラチナえるぼしは56社で、その後も増え続けています。
満たせない基準がある場合の打ち手
基準ごとに、比較的短期で動かせる方法と、時間のかかる方法があります。
管理職比率には2つのルートがあります。比率そのものを産業平均以上にするルートと、課長級の一つ下から課長級への昇進率を男性の8割以上にするルートです。管理職の母数が小さい企業では前者が運任せになりやすく、後者のほうが計画的に取り組めます。昇進率のルートを使うには、職階別・年度別の昇進者数を男女別に把握しておく必要があります。この把握は、認定のためだけでなく、女性管理職比率がなぜ上がらないかを特定するうえでも出発点になります。
労働時間は、年平均ではなく各月で判定されるため、繁忙月の対策に絞れます。特定の部署や職種だけが45時間を超えている場合は、全社の残業削減より、その月のその部署の業務配分を見直すほうが早く効きます。
採用は、競争倍率のルートと女性割合のルートがあります。応募者の男女比を把握していない企業は、まず募集経路ごとの応募者数を男女別に集計するところから始めてください。
継続就業は、勤続年数比が0.7に届かない場合、新卒採用者の在籍割合で見る方法に切り替えると満たせることがあります。どちらで計算するかは企業が選べます。
多様なキャリアコースは実績の有無で判定されるため、直近3事業年度に該当者がいるかを確認し、いなければ制度と運用を整えて実績を1件つくるところからです。
くるみん認定と併せて取得を考える場合の整理は「くるみんとえるぼしの違いとは?認定基準・取得メリット・併用効果を徹底解説」にあります。
申請準備でよくある5つの失敗
- 雇用管理区分の切り方が曖昧なまま計算する。 採用と継続就業は雇用管理区分ごとに判定されます。総合職と一般職、地域限定職などの区分を先に固定してから集計してください。
- 産業分類を取り違える。 自社が属する産業大分類と、その年に適用される平均値を確認せずに比較すると、満たしているつもりで落ちます。
- 単年度の数字だけを見る。 採用の競争倍率や管理職比率の昇進率は直近3事業年度の平均で判定されます。3年分のデータをそろえてから判断してください。
- 情報公表を怠っている。 評価項目の実績を毎年公表していないと、そもそも申請できません。一般事業主行動計画の策定・届出も前提です。手順は「一般事業主行動計画とは|女性活躍推進法の策定手順と届出方法」にまとめています。
- 認定後の維持を考えていない。 産業平均値は毎年変わり、労働時間は毎月判定されます。取得した年の水準を翌年も保てる体制がなければ、更新時に段階が下がります。
Floraの支援:基準4を計画的に満たすためのデータ整備
Flora株式会社の「ダイバーシティデータプログラム」は、既存の人事データから階層別の女性比率と昇進率を可視化し、女性管理職比率が動かない要因を特定する支援です。えるぼし認定の管理職比率の基準を昇進率のルートで満たすには、まさにこの職階別・年度別の昇進データが必要になります。
認定のための数字づくりにとどまらず、どの昇進段階で女性が減っているのか、評価と登用のどちらに差があるのかを把握することで、認定の維持と女性管理職比率の実質的な改善を同じ取組として進められます。有価証券報告書や公表義務への対応にも、同じデータをそのまま使えます。
まとめ
えるぼし認定は、5つの基準を自社の人事データで計算するところから始まります。多くの企業がつまずくのは管理職比率と労働時間で、前者には昇進率のルートが、後者には月単位の対策があります。産業平均値は毎年7月に更新されるので、申請時点の値で判断してください。
2026年4月からは1段階目の基準が緩和され、健康課題への配慮を評価するえるぼしプラスも新設されました。まず自社が5基準のどこにいるかを計算し、今年取れる段階と来年狙う段階を分けて計画するのが現実的です。
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よくある質問
管理職が数名しかいない会社でも、管理職比率の基準は満たせますか。
産業平均値はどこで確認できますか。
1段階目の緩和とは具体的に何が変わったのですか。





