企業のヘルスリテラシー研修とは?|健康経営度調査での評価と、女性の健康を含めた設計のポイント
2026年 9月 10日

ヘルスリテラシーとは、健康に関する情報を手に入れ、理解し、自分の判断と行動に使う力のことです。企業がその向上のために行う研修や情報提供は、健康経営優良法人の認定要件の1つになっていて、実施しただけでなく参加率を測っていることまで求められます。この記事では、健康経営度調査でヘルスリテラシー研修がどう評価されるか、ヘルスリテラシーの高さが仕事のパフォーマンスとどう関係するかを示した調査、そして女性の健康を含めて企業が研修を設計し効果を測る手順を解説します。
企業のヘルスリテラシー研修は健康経営度調査でどう評価されるか
健康経営度調査(大規模法人部門)では、「従業員の健康課題の把握と必要な対策の検討」の中に「ヘルスリテラシーの向上」という評価項目があります。令和7年度の調査票では、管理職または従業員に対する教育機会の設定がQ38、健康保持・増進に関する教育の内容がQ39で問われ、健康経営優良法人の認定要件⑤「管理職または従業員に対する教育機会の設定」に対応しています。
押さえておきたいのは、要件の注記です。「従業員の健康保持・増進に関する教育」については、参加率(実施率)を測っていることが条件になっています。研修を実施したという事実だけでは要件を満たしません。誰を対象に、何人が参加し、参加率が何%だったかを答えられる必要があります。
令和7年度からは、健診情報などを従業員が電子記録で閲覧できる環境の整備も、ヘルスリテラシー向上の取り組みとして評価対象に加わりました。研修で知識を得ることと、自分の健診結果を見て行動することが、同じ項目の中で並んでいます。認定要件の全体は「健康経営優良法人2027|認定基準と申請の全工程」に、法定の安全衛生教育との違いは「安全衛生教育とは|義務となる種類・内容・実施方法を徹底解説」にまとめています。
ヘルスリテラシーが高い人は、仕事のパフォーマンスが高い
ヘルスリテラシー研修に投資する根拠として最もよく引用されるのが、日本医療政策機構の「働く女性の健康増進に関する調査2018」です。18〜49歳のフルタイムで働く女性2,000名を対象に、女性の健康に関するヘルスリテラシーの尺度と、WHOの質問紙による仕事のパフォーマンスを測っています。
主な結果は次のとおりです。
| 項目 | ヘルスリテラシーが高い群の結果(低い群との比較) |
|---|---|
| 1か月の仕事のパフォーマンス | 高い群のほうが有意に高い |
| PMS・月経随伴症状や更年期症状によるパフォーマンスの低下 | 高い群のほうが、下がる割合が低い |
| 月経異常があったときの対処行動(市販薬・受診など) | 約2.8倍 |
| PMSがあったときの対処行動 | 約1.9倍 |
| 更年期症状があったときの対処行動 | 約1.9倍 |
| 婦人科・産婦人科の定期受診 | 約2.2倍 |
| 望んだ時期に妊娠できた割合 | 約1.9倍 |
| 職務満足感・生活満足感・QOL | 高い群のほうが有意に高い |
同じ調査では、PMSや月経随伴症状があるときに仕事のパフォーマンスが半分以下になると答えた人が約半数、更年期症状でも約半数でした。症状そのものは多くの人にあり、差が出るのは対処できるかどうか。そして、パフォーマンスと最も関連していたのは「女性の体に関する知識」の項目でした。ヘルスリテラシー研修が女性の健康を扱うべき理由は、この結果にあります。女性の健康課題によるプレゼンティーズムの損失額は「女性の健康課題によるプレゼンティーズム損失3.4兆円」で扱っています。
東京都の指針とえるぼしプラスでも、研修は求められている
ヘルスリテラシーの向上を求めているのは健康経営度調査だけではありません。2026年7月施行の東京都女性活躍推進条例にもとづく指針は、女性特有の健康課題について従業員への研修や普及啓発を行うことを事業者の対応の1つに挙げ、職場で基本的な情報を共有することで本人のヘルスリテラシーが高まり治療につながる、と説明しています。2026年4月に創設されたえるぼしプラスの認定基準でも、女性の健康に関する研修等の実施が4つの基準の1つです。
3つの制度が求めている内容は同じ方向を向いています。全社員が女性の健康を含む基礎知識を持つこと、管理職が相談先につなげること、当事者が対処行動を取れること。1つの研修を設計すれば、健康経営度調査、東京都の指針、えるぼしプラスの3つに同じ実績で答えられます。実施日・対象・参加率・事後の変化を同じ様式で記録しておくことが、その条件です。
研修が「知識の提供」で止まる3つの理由
ヘルスリテラシー研修を実施している企業は多いのに、健診結果や受診行動が変わらないことがあります。理由はたいてい3つです。
内容が一般的すぎる。 生活習慣病、運動、食事の一般論は、すでに知っていることの再確認になりがちです。自社の健診データで課題が大きい項目、自社の従業員構成で多い年代・性別の課題に絞ったほうが、行動につながります。
知識と行動の間に道がない。 月経痛や更年期の症状に市販薬や受診という選択肢があると知っても、受診する時間が取れない、相談先が分からなければ行動は変わりません。研修と同時に、休暇制度、相談窓口、健診結果の閲覧環境を案内する必要があります。
効果を参加率でしか測っていない。 参加率は認定要件の最低限です。研修の前後で知識の理解度と行動意向を同じ設問で測り、数か月後に受診率や健診結果の変化を追わないと、研修が効いたかどうかは分かりません。
女性の健康を含めたヘルスリテラシー研修の設計
全社員向けの研修に女性の健康を組み込むときの設計は、次の5つで考えます。
- 対象を分けて内容を変える。 全社員向けは月経・PMS・更年期・女性特有のがんの基礎知識と、男性の更年期も含めた「自分と同僚の体に何が起きるか」。管理職向けは、症状を聞き出すのではなく相談先につなぐ対応。当事者向けは、対処行動と受診のタイミングです。全社向けの更年期研修の組み立ては「更年期研修を全社員向けに実施する意義と進め方」を参照してください。
- 自社の数字を入れる。 健診の問診結果、婦人科検診の受診率、健康に関する休職の年代・性別の分布など、個人が特定されない範囲で自社の数字を示すと、一般論ではなく自社の話として聞かれます。婦人科検診の受診率が低い理由は「女性のがん検診受診率はなぜ低いのか」にまとめています。
- 制度と一緒に案内する。 生理休暇や時間単位の休暇、相談窓口、オンライン診療の補助など、研修で得た知識をすぐ使える制度を同じ資料に載せます。PMSと仕事の両立で企業が用意できる制度は「PMS(月経前症候群)と仕事の両立|企業が知っておくべき基礎知識」にあります。
- 事前・事後を同じ設問で測る。 知識の理解度、症状があったときの対処の予定、相談先を知っているか、の3点を研修前と直後、3か月後に同じ形で聞きます。
- 参加率を属性別に出す。 全体の参加率だけでなく、年代・性別・部署別の参加率を出します。参加していない層が偏っていれば、次回の案内方法を変えます。
効果測定:参加率の先にある3つの指標
健康経営度調査に答えるための最低限は参加率ですが、経営層に効果を説明するには次の3つが要ります。
- 知識と行動意向の変化。 研修前後の理解度と対処行動の予定の差。
- 行動の変化。 3〜6か月後の婦人科検診の受診率、相談窓口の利用件数、健診結果の閲覧率。
- パフォーマンスの変化。 サーベイで測る仕事のパフォーマンス発揮度の、年代・性別ごとの推移。
3つ目まで測ると、ヘルスリテラシー研修が女性の健康課題によるプレゼンティーズムの損失をどれだけ減らしたかを示せます。日本医療政策機構の調査が示した「ヘルスリテラシーが高い人はパフォーマンスが高い」という関係を、自社の数字で確かめることになります。
Floraの支援:Wellflow
Flora株式会社の「Wellflow」は、従業員向けのヘルスケアアプリと管理職・全社員向けの研修、導入前後を同じ指標で測る効果検証サーベイを組み合わせた健康経営支援サービスです。ヘルスリテラシー研修では、女性の健康を含む全社員向け・管理職向けの内容を自社の健診・サーベイの数字に合わせて設計し、参加率を属性別に記録し、研修前後と数か月後に同じ設問で知識・行動・パフォーマンスの変化を測ります。結果は健康経営度調査のQ38・Q39と女性の健康に関する設問に使える形でお渡しします。生理痛体験研修とあわせて、これまでに150社以上に導入されています。
まとめ
ヘルスリテラシー研修は、健康経営優良法人の認定要件⑤に対応し、参加率を測っていることまで求められます。研修に投資する根拠は、ヘルスリテラシーが高い人ほど仕事のパフォーマンスが高く、月経や更年期の症状に対処でき、定期受診している、という2,000名調査の結果です。
設計では、対象を分け、自社の数字を入れ、制度と一緒に案内し、事前・事後を同じ設問で測り、参加率を属性別に出す。効果は参加率の先にある知識・行動・パフォーマンスの3つで示してください。
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よくある質問
ヘルスリテラシー研修はeラーニングでも認定要件を満たしますか。
女性の健康の内容を、男性社員にも受講させる必要がありますか。
研修の効果はいつ、何で測ればよいですか。





