健康経営度調査の睡眠設問|2026年度に新設される「睡眠の質向上に向けた取組」で問われること
2026年 9月 10日

令和8年度(2026年度)の健康経営度調査で、睡眠が独立した設問になります。これまで睡眠は、肩こり・腰痛や飲酒と同じ「従業員の生産性低下防止への施策」の一部でした。2026年7月の健康経営推進検討会で、「睡眠の質向上に向けた取組」を新たな項目として置く案が示され、食生活・運動と並ぶ扱いになります。この記事では、新設の背景と令和7年度からの変更点、他社がすでに何をしているか、女性の健康との接点、そして自社で取組を設計して効果を測る手順を解説します。健康経営度調査の睡眠設問に何を書くか、ではなく、何をすれば書けるようになるかを中心にまとめています。
なぜ今、睡眠が独立した項目になるのか
経済産業省の第6回健康経営推進検討会(2026年7月14日)の資料は、睡眠を独立項目にする背景として3つを挙げています。
1つ目は政策です。経済財政運営と改革の基本方針2026(骨太の方針)の原案に「睡眠対策を含む健康経営の推進」が明記されました。2つ目は市場の整備で、2026年3月に睡眠関連の2つの業界団体が、睡眠関連商品・サービスに関する業界自主ガイドラインを連名で公表しています。3つ目は医療側の変化で、2026年6月から医療機関が「睡眠障害」を診療科名として使えるようになり、受診のハードルが下がることが期待されています。
資料は、睡眠不足による業務パフォーマンスの低下と心の健康への影響について研究が進んでいることにも触れています。睡眠はプレゼンティーズムの主要な要因の1つで、損失額の測り方は「プレゼンティーズムの測定方法:損失額の計算や分析方法から対策まで」で扱っています。
令和8年度の健康経営度調査で睡眠の設問はどう変わるか
変更は、調査票の「3. 制度・施策実行」の中の「具体的な健康保持・増進施策」の部分です。
| 令和7年度 | 令和8年度(案) | |
|---|---|---|
| 睡眠の位置づけ | 「従業員の生産性低下防止への施策」の設問に、睡眠・肩こり・腰痛・飲酒・花粉症・眼精疲労などをまとめて含む | 「睡眠の質向上に向けた取組」を独立した設問として新設。食生活・運動と同じ並びに |
| 選択肢 | 仮眠室の設置、仮眠制度、SAS検査、睡眠改善アプリ、睡眠関連指導など | 睡眠改善を目的としたウェアラブルデバイスの配布などを追加する案 |
| 従業員教育の設問 | 選択肢に「睡眠」を含む | 変更なし |
| 健診結果の設問 | 「睡眠により十分な休養が取れている人」の割合を記入 | 変更なし |
(出典:経済産業省 第6回健康経営推進検討会 資料、2026年7月14日)
押さえておきたいのは、睡眠に関する現状把握の設問は以前からあることです。従業員教育の選択肢に睡眠が含まれ、健診結果の設問では「睡眠により十分な休養が取れている人」の割合を記入します。新設されるのは取組の設問で、現状把握と取組と結果を一つの流れで答えられる企業が評価される形になります。健康経営度調査全体の考え方は「健康経営優良法人2027|認定基準と申請の全工程」を参照してください。
他社はすでに何をしているか
令和7年度の調査票(大規模法人部門、n=4,175)で、睡眠障害や業務中の眠気による生産性低下の予防に取り組んでいる企業の内訳は次のとおりでした。
| 取組 | 実施している企業の割合 |
|---|---|
| 仮眠室の設置 | 60.8% |
| 睡眠関連指導の導入 | 47.1% |
| 睡眠改善アプリの導入 | 39.6% |
| SAS(睡眠時無呼吸症候群)検査の実施 | 18.9% |
| 仮眠制度の導入 | 5.1% |
| その他 | 35.4% |
読み取れるのは、設備は整っているが制度は少ない、ということです。仮眠室は6割の企業にありますが、仮眠を制度として認めている企業は5%にとどまります。仮眠室があっても、業務中に使ってよいという合意がなければ使われません。指導とアプリは4〜5割で、個人へのアプローチは進んでいます。
自社の取組を考えるときは、この表のどこに入るかではなく、現状把握・教育・個別支援・環境・制度の5つがそろっているかで見るほうが、調査票の並びに合います。
女性の健康と睡眠の接点
睡眠の取組を全社一律で設計すると、女性の健康課題との接点を見落とします。月経周期に伴う体温の変化や月経前の不調は睡眠の質に影響し、更年期には不眠やほてりによる中途覚醒が代表的な症状の1つです。育児期には、時短勤務でも睡眠が細切れになる状態が続きます。
これらは睡眠の設問だけでなく、女性の健康に関する設問とも重なります。健診結果の「睡眠により十分な休養が取れている人」の割合を、年代・性別で分けて見てください。40〜50代女性の割合が低ければ、更年期の対応と睡眠の取組は一つの施策として設計できます。更年期の症状への対応は「更年期と仕事の両立支援|企業が取り組むべき対応とは」に、メンタル面の変化は「更年期うつとは?職場での気づき方と企業の対応」にまとめています。
取組の設計と効果測定の5つの手順
- 現状を年代・性別で把握する。 健診の問診にある休養の項目と、従業員サーベイの睡眠時間・睡眠の満足度を、年代・性別・勤務形態で集計します。厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」は成人で6時間以上の睡眠を目安にしており、これを下回る層の割合が出発点になります。健診の基本は「会社の健康診断とは|義務・対象者・費用負担を人事担当者向けに解説」を参照してください。
- 教育を入れる。 全社員向けの睡眠の基礎知識に、女性の健康や交代勤務など、自社の従業員構成に合った内容を加えます。
- 個別支援を用意する。 睡眠関連指導、アプリ、SAS検査のうち、現状把握で見えた層に合うものを選びます。眠気の強い層にはSAS検査、休養が取れていない層には指導とアプリ、という分け方です。
- 環境と制度を合わせる。 仮眠室を置くなら仮眠を認める制度を、テレワークや時差出勤を睡眠の観点からも案内します。
- 同じ指標で再測定する。 1年後に1の指標を同じ形で取り、変化を見ます。プレゼンティーズムの指標と一緒に測っておくと、睡眠の改善が業務パフォーマンスにどう表れたかを示せます。プレゼンティーズムとアブセンティーズムの基礎は「アブセンティーズムとプレゼンティーズムとは?企業が知るべき基礎知識」にあります。
調査票に書くときは、次の3点を押さえておきます。新設の設問は、令和7年度までと同じく該当する取組にチェックを入れる形式になる見込みですが、チェックの数で評価が決まるわけではありません。健康経営度調査は全体として、取組の対象者数・実施率と、その結果として何が変わったかを問う設計になっています。
- 対象と実施率を残す。 睡眠の教育を実施した対象者数と参加率、アプリの配布数と継続利用率、指導の実施件数を、年度ごとに同じ様式で記録します。
- 現状把握の設問と数字をそろえる。 健診結果の「睡眠により十分な休養が取れている人」の割合を、取組の前後で比較できる形にしておきます。取組の設問と現状把握の設問で同じ年度の数字を使えると、流れが通ります。
- 属性別の結果を持っておく。 年代・性別・勤務形態で分けた結果は、記述式の欄や女性の健康に関する設問でも使えます。1つの取組を複数の設問の根拠にできるのは、属性別に測っている企業だけです。
よくある失敗
仮眠室をつくって終わる。 実施率6割の仮眠室と5%の仮眠制度の差が、この失敗の多さを示しています。設備は制度とセットで初めて使われます。
アプリを配布して利用率を見ない。 睡眠改善アプリは導入企業が4割ありますが、利用が続かなければ調査票に書ける実績になりません。利用率と、利用者の睡眠指標の変化を追ってください。
全社一律で設計する。 交代勤務の有無、年代、性別で睡眠の課題は違います。現状把握を属性別にしないと、施策が誰にも合わない設計になります。
睡眠を単独の施策として扱う。 睡眠は、メンタルヘルス、更年期、長時間労働の対応と重なります。既存の取組に睡眠の観点を足すほうが、新しい施策を増やすより現実的です。
Floraの支援:Wellflow
Flora株式会社の「Wellflow」は、従業員向けのヘルスケアアプリと管理職・全社員向けの研修、導入前後を同じ指標で測る効果検証サーベイを組み合わせた健康経営支援サービスです。睡眠の取組では、サーベイで睡眠の状態とパフォーマンス発揮度を年代・性別ごとに把握し、女性の健康課題と重なる層への研修とセルフケア支援を行い、1年後に同じ指標で再測定する流れを一つの設計で支援します。結果は個人を特定しない形で集計し、健康経営度調査の現状把握・取組・効果の各設問に使える形でお渡しします。生理痛体験研修とあわせて、これまでに150社以上に導入されています。
まとめ
令和8年度の健康経営度調査で、睡眠の質向上に向けた取組が独立した設問になります。背景には、骨太の方針2026への明記、業界自主ガイドライン、睡眠障害の診療科名化があります。現状把握と教育の設問はすでにあり、新設されるのは取組の設問です。
他社の実施状況を見ると、仮眠室は6割にあるが仮眠制度は5%で、設備と制度がかみ合っていません。自社では、年代・性別で現状を把握し、教育・個別支援・環境と制度をそろえ、1年後に同じ指標で測る。女性の健康課題との接点を見ておくと、更年期の対応と睡眠の取組を一つの施策にできます。
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よくある質問
令和8年度の調査票で、睡眠の設問は必ず答える必要がありますか。
仮眠室がないと評価されませんか。
睡眠の取組の効果は何で示せばよいですか。





