同一労働同一賃金の2026年改正|10月1日施行の変更点

2026年 9月 14日

同一労働同一賃金の2026年改正は、2026年10月1日に施行されます。厚生労働省令第87号と告示第202号・第203号が2026年4月28日に公布されたもので、企業規模による猶予は設けられていません。

法律そのものの改正ではなく、施行規則とガイドライン、そして雇用管理指針の改正です。ただし、雇入れ時の明示事項の追加には過料が定められているため、様式の手当てだけは期日までに終えておく必要があります。

この記事では、3つの改正点をそれぞれ整理し、今月から施行後までに何をするかを時期ごとにまとめます。出典は厚生労働省のリーフレット「パートタイム・有期雇用労働者に関するルールが変わります(令和8年10月1日施行)」です。

同一労働同一賃金の2026年改正で何が変わるか

改正は3本立てです。根拠となる文書がそれぞれ違います。

変わること根拠
雇い入れ時の労働条件明示事項が追加されるパート・有期法 施行規則
「同一労働同一賃金ガイドライン」が改正される告示
雇用管理の改善等に関する措置の内容が変わる告示(雇用管理指針)

対象はパートタイム労働者と有期雇用労働者です。ここを取り違えると準備の範囲がずれます。女性活躍の枠組みではなく、正規と非正規の待遇差の枠組みの改正です。ただし後述のとおり、男女間賃金差異の数字には効いてきます。

3つのうち、期日を落とすと直接の不利益があるのは❶だけです。❷と❸は、点検と運用の見直しを求めるものです。

❶ 雇入れ時の労働条件明示事項の追加

パートタイム・有期雇用労働者を雇い入れたときの明示事項に、1項目が加わります。

現行の明示事項は、昇給の有無、退職手当の有無、賞与の有無、相談窓口の4つです。ここに「待遇の相違の内容・理由等に関する説明を求めることができる」旨の明示が加わります。

違反した者は10万円以下の過料に処されます。 3つの改正点のうち、罰則が明記されているのはここだけです。

リーフレットには労働条件通知書の記載例が示されています。「次の窓口に対して通常の労働者との間の待遇の相違(内容・理由)等について説明を求めることができる。部署名/担当者職氏名/連絡先」という形です。「通常の労働者」は自社での呼称、たとえば「正社員」に置き換えて記載しても構いません。

実務として先に決めるのは、窓口を誰にするかです。様式に部署名と担当者を書く以上、社内で受け手を決めておかないと通知書が完成しません。厚生労働省はモデル労働条件通知書も公開しています。

なお、この明示は労働契約の更新時にも適用されます。10月1日以降に更新を迎える契約から必要になるため、更新の多い時期を持つ会社は、雇入れより更新のほうが件数として先に来ます。

❷ ガイドラインが明確にした待遇

ガイドラインは、どのような待遇差が不合理なのかについて考え方と具体例を示したものです。今回、次の待遇について記載が追加されました。

待遇追加された考え方
賞与・退職手当労務の対価の後払い、功労報償等の目的が当てはまるのに、職務の内容等の違いに応じた均衡のとれた内容を支給しない場合、不合理と認められる可能性がある
無事故手当業務の内容が同一なら、正社員と同一の無事故手当を支給しなければならない
家族手当契約更新を繰り返している等、相応に継続的な勤務が見込まれる場合、正社員と同一の家族手当を支給しなければならない
住宅手当「転居を伴う配置の変更の有無に応じて支給されるもの」である場合、同一の配置変更があるなら同一の住宅手当を支給しなければならない
福利厚生施設料金・割引率等の利用条件について、不合理と認められる待遇差を設けてはいけない
病気休職正社員に休職期間の給与保障を行う場合、相応に継続的な勤務が見込まれる労働者にも同一の保障を行わなければならない
夏季冬季休暇正社員と同一の夏季冬季休暇を付与しなければならない
褒賞「一定の期間勤続した労働者に付与するもの」である場合、同一期間勤続した労働者には同一の褒賞を付与しなければならない

手当の名前で判断せず、その待遇が何のために支給されているかで判断する、という構造です。自社の手当について、まず目的を文章にするところから始めると点検が進みます。

あわせて、共通の留意事項も示されました。押さえておきたいのは次の3つです。

  • 正社員の待遇を引き下げて差を解消しない。 不合理な待遇差を解消する際は、正社員の労働条件を不利益に変更するのではなく、パートタイム・有期雇用労働者の労働条件の改善を図ることが求められます。
  • 定年後の継続雇用であることだけでは理由にならない。 待遇差が不合理かどうかは、それぞれの待遇の性質・目的に照らして判断されます。
  • 「正社員人材の確保や定着」だけでは理由にならない。 その目的があったとしても、待遇の他の性質・目的にも照らして判断されます。

無期雇用フルタイム労働者はパート・有期法の適用対象ではありませんが、労働契約は均衡を考慮して締結すべきものであり、この考慮にあたってはガイドラインの趣旨を考慮すべきとされています。有期から無期に転換した後の労働条件を決めるときは、転換前の待遇差をあらかじめ点検し、あれば確実に解消することが求められます。いわゆる「多様な正社員」も同様です。

❸ 雇用管理上の措置と、説明の方法

雇用管理指針の改正では、運用面の留意事項が広がりました。人事の実務に直接効くのは説明の部分です。

待遇差がある場合、労働者から求めがあれば、事業主は①待遇差の内容や理由、②法第6条から第13条までの措置を講じるにあたって考慮した事項を説明しなければなりません。今回、その方法が具体化されました。

  • 「資料を活用し、口頭により説明する方法」または「説明すべき事項を全て記載した分かりやすい内容の資料を交付する等の方法」のいずれかで説明する
  • 口頭で説明する場合は、説明に活用した資料等を交付することが望ましい
  • 個人情報の漏えい防止等の観点から資料の交付が難しい場合でも、事後に求めがあったときは閲覧させる等の工夫に努める

もう一点、求めがないときの扱いが加わりました。説明の求めがない場合であっても、労働契約の更新時等に、待遇差の内容・理由に関する分かりやすい資料を交付することや、説明を求めることができる旨を周知することが望ましいとされています。❶の明示と合わせると、更新のタイミングが実務の起点になります。

このほか、職業能力開発法がパートタイム・有期雇用労働者にも適用されること、公正な評価に基づいて賃金を決定することが望ましいこと、パート・有期過半数代表者の要件と不利益取扱いの禁止、福利厚生施設の便宜供与への配慮、正社員転換推進措置の実施方法、労使の話合いの促進、雇用管理の改善等に関する情報の公表が示されています。

正社員転換については、労働契約の更新の際の面談等の機会やメール等を活用して対象者の意向を確認し、その意向に配慮しなければならないとされています。

男女間賃金差異の数字にどう効くか

この改正は正規と非正規の枠組みですが、公表している数字には跳ね返ります。

男女間賃金差異は、全労働者・正規雇用労働者・非正規雇用労働者の3区分で算出します。非正規に女性が多い構成であれば、全労働者ベースの差異は雇用区分の構成を強く映します。家族手当や住宅手当、夏季冬季休暇の扱いを見直せば、非正規側の待遇が動き、区分ごとの数字も動きます。

つまり、待遇差の点検は賃金差異の数字を動かす作業でもあります。公表の前に点検を終えておくと、翌年の数字が動いた理由を制度変更として説明できます。2026年4月の女性活躍推進法の改正とあわせて動く年でもあります。全体の流れは「女性活躍推進法の2026年改正」で整理しました。計算の手順は「男女間賃金差異の計算方法」に、実際の試算は「男女間賃金差異の計算ツール」にまとめています。開示側の全体像は「人的資本開示の女性活躍3項目」で扱いました。

注意したいのは、差異を縮めるために正社員の待遇を下げる方向に進まないことです。ガイドラインが明示的に否定しています。

今月から施行後までの実務

期日から逆算すると、順番はこうなります。

今月(9月)にやること

  1. 労働条件通知書の様式に、説明を求めることができる旨の記載を追加する。過料の対象はここだけなので最優先です。
  2. 説明を求める窓口の部署名と担当者を決める。様式に書く欄があるため、決まらないと様式が完成しません。
  3. 10月以降に契約更新を迎える対象者を洗い出す。更新のほうが件数として先に来ます。

10月1日までにやること

  1. 自社の手当・休暇・福利厚生を一覧にし、それぞれの目的を1行で書き出す。賞与、退職手当、無事故手当、家族手当、住宅手当、病気休職、夏季冬季休暇、褒賞、福利厚生施設が対象です。
  2. 目的がパートタイム・有期雇用労働者にも当てはまるものを選び、支給要件が均衡のとれたものになっているかを確認する。
  3. 説明の方法を決める。口頭に資料を添えるのか、資料の交付で完結させるのか。書式を先に作っておくと、求めがあったときに慌てません。

10月1日以降にやること

  1. 更新時に、待遇差の資料交付または説明を求められる旨の周知を行う。求めがなくても望ましい対応とされています。
  2. 正社員転換推進措置について、更新時の面談等で意向を確認し、その意向に配慮する。
  3. 点検で見つかった差について、改善の順番と時期を決める。解消は正社員の引き下げではなく非正規側の改善で行います。

1から3までは様式と体制の話なので、数日で終わります。4から6は自社の手当の数によりますが、目的の書き出しが終われば判断は速く進みます。

Floraの支援:待遇差の点検と、公表する数字をつなぐ

Flora株式会社の「ダイバーシティデータプログラム」は、企業の人事データを分析し、待遇や登用の差がどの段階で生まれているかを特定するコンサルティングです。雇用区分別・等級別に分解して見るため、今回の改正で点検が必要になる待遇差と、公表している男女間賃金差異の関係を同じ土台で扱えます。

点検の結果を翌年の公表にどう反映するかまで含めて設計できます。まず30分、貴社の雇用区分と、いま公表している数字の持ち方をお聞かせください。

まとめ

同一労働同一賃金の2026年改正は、2026年10月1日施行、企業規模による猶予はありません。変わるのは、雇入れ時の明示事項、ガイドライン、雇用管理指針の3つです。

期日を落とすと直接の不利益があるのは明示事項だけで、違反は10万円以下の過料です。まず様式と窓口を決めてください。ガイドラインは賞与・退職手当、無事故手当、家族手当、住宅手当、福利厚生施設、病気休職、夏季冬季休暇、褒賞について記載を追加しました。手当の名前ではなく目的で点検します。

そして、待遇差の点検は男女間賃金差異の数字を動かす作業でもあります。解消の方向は、正社員の引き下げではなく非正規側の改善です。

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