育児時短就業給付金とは|2歳未満の時短勤務と、人事が整える手続き
2026年 9月 28日

育児時短就業給付金とは、2歳に満たない子を養育するために時短勤務(育児時短就業)をした場合に、育児時短就業前と比較して賃金が低下するなどの要件を満たすときに支給される雇用保険の給付です。2025年4月1日に創設されました。
背景にあるのは、仕事と育児の両立支援として時短勤務を選択しやすくするという目的です。育児休業からフルタイム復帰までの間に、収入減を理由に時短を選べない、という状態を減らすための制度と位置づけられています。厚生労働省は、育児中の柔軟な働き方として時短勤務制度を選択しやすくすることを目的とする、と説明しています。
この記事では、支給要件と企業側の手続き、そして給付ができても残る問題を整理します。
(出典:厚生労働省・都道府県労働局・ハローワーク「令和7年4月から出生後休業支援給付金・育児時短就業給付金を創設します」)
育児時短就業給付金の支給要件
大きく2つです。
①2歳に満たない子を養育するために育児時短就業をする雇用保険の被保険者であること。
子の年齢の上限が2歳である点が、他の制度とずれます。ここは社内説明でいちばん間違えやすい箇所です。育児・介護休業法が事業主に義務づけている短時間勤務制度は3歳未満が対象で、2025年10月から始まった柔軟な働き方を実現するための措置は3歳から小学校就学前が対象です。給付の対象は2歳未満なので、制度としての時短は続くが給付は先に終わる期間が生まれます。
②育児休業給付の対象となる育児休業から引き続いて育児時短就業を開始したこと。または、育児時短就業開始日前2年間に被保険者期間が12か月あること。
育休から続けて時短に入る人はそのまま対象になります。育休を取らずに時短だけを始める人や、転職後間もない人については、被保険者期間で判断されることになります。
あわせて、育児時短就業前と比較して賃金が低下していることが要件に含まれます。時短にしても賃金が下がらない設計の会社では、対象にならない場合があります。
支給額と支給率はハローワークが扱う雇用保険の制度で、改定されることがあります。最新の金額と計算方法は、育児休業等給付のパンフレットまたはハローワークの案内でご確認ください。
年齢の区切りが3つある
育児期の制度は、対象となる子の年齢がそろっていません。表にすると、どこで何が切れるかが見えます。
| 制度 | 対象となる子 |
|---|---|
| 育児時短就業給付金(雇用保険) | 2歳に満たない子 |
| 短時間勤務制度(育児・介護休業法の義務) | 3歳未満の子 |
| 柔軟な働き方を実現するための措置(2025年10月から) | 3歳から小学校就学の始期に達するまでの子 |
| 所定外労働の制限(残業免除) | 小学校就学前の子 |
本人から見ると、2歳で給付が切れ、3歳で短時間勤務の義務が切れ、そこから柔軟な働き方の措置に移る、という順で条件が変わっていきます。変わる時期が3回あるということです。復職時に一度説明しただけでは足りません。
人事側の手続きで押さえること
手続きは育児休業給付と同じく、事業主を経由した申請が中心になります。新しい制度なので、社内で先に決めておくと詰まらない点が3つあります。
- 時短の開始日を記録として残す。 育休から引き続いて開始したのか、そうでないのかで要件の見方が変わります。復帰日と時短開始日が同じかどうかを、復職手続きの様式に入れておきます。
- 賃金の低下を説明できる形にする。 時短前と時短後の賃金がわかる記録が要ります。手当の扱いを時短でどう変えるかを先に決めていないと、あとで整理がつきません。
- 2歳到達のタイミングを管理する。 給付は2歳未満が対象です。子が2歳になった時点で給付は終わりますが、社内の時短制度は続く場合があります。本人にとっては手取りが下がるタイミングなので、事前に伝わっていないと不信につながります。
時短を選びやすくすることの、もう一方の効き方
この給付は時短を選びやすくする制度ですが、選びやすくなること自体に2つの向きがあります。
ひとつは本来の狙いどおり、収入減を理由にフルタイム復帰を急いでいた人が、無理のない働き方を選べるようになる向きです。復帰直後にフルタイムへ戻って体調を崩す、子どもの発熱のたびに休んで評価が下がる、という流れを止められます。
もうひとつは、時短に留まる期間が延びる向きです。給付があることで時短を続ける選択が取りやすくなり、結果として通常勤務へ戻る時期が後ろにずれることがあります。これ自体は本人の選択として尊重されるべきものですが、人事としては、戻る意思がある人が戻れる状態になっているかを別に確認する必要があります。
どちらに転ぶかは制度ではなく運用で決まります。時短のまま任される仕事が限定され続ければ、戻る動機も戻れる実力も育ちません。
給付があっても、キャリアは止まる
ここがこの制度のいちばん重要な論点です。育児時短就業給付金は収入の問題を軽くしますが、キャリアの問題には触れていません。
時短勤務を選んだ人が直面するのは、手取りの減少だけではありません。任される仕事の範囲が狭まる、評価の対象になる成果が積み上がらない、昇格の候補から外れる、といった変化のほうが、長期的には大きく効きます。給付で収入が補われるほど、この部分が見えにくくなる可能性すらあります。
育休復職後に女性のキャリアが止まる仕組み|時短勤務とキャリアトラックを人事データで見るでは、時短勤務者の等級推移を追うと何が見えるかを扱っています。
周囲への影響も別の論点です。時短勤務者の業務を誰がどう引き取るかが設計されていない職場では、不公平感が生まれ、それが時短勤務者本人への言動として表れることがあります。立て直し方は時短・育休の「しわ寄せ」で不公平感が出る職場の立て直し方に、言動が行き過ぎた場合の扱いは時短ハラスメント(ジタハラ)とはにまとめました。
同じ2025年4月の改正で変わった子の看護等休暇については子の看護等休暇とはをご覧ください。
サンプルデータで見る、止めているものの正体
架空のグループ「サンライズHD」のサンプルデータで、育休の有無をそろえて比較した例を挙げます。実在の企業の数字ではありません。
傾向スコアで属性をそろえて5年後を比べると、育休を取得した人と取得していない人の間で、グレード階位にはほとんど差がありませんでした(+0.14)。人事評価、継続意欲、ウェルビーイングもほぼ同じです。5年離職率はむしろ育休取得者のほうが低く、19.4%対23.8%でした。
一方で、はっきり違ったのが年間残業時間です。5年継続在籍者で、育休取得者94時間に対し、非取得者241時間。
この並びが示しているのは、キャリアを止めているのは育休そのものではないということです。差がついているのは働ける時間の量であり、その時間の量を前提に管理職像が作られていれば、時短を選んだ時点で候補から外れます。給付金が収入を補っても、この構造は動きません。
人事が見るべき3つの数字
給付が始まったことで、時短勤務を選ぶ人は増えます。増えたあとに何が起きているかを見るために、次の3つを追ってください。
- 時短勤務者の等級分布と、同年次のフルタイム勤務者との差。 時短を選んだ時点から差が開き始めるのか、時短を終えてから開くのかで、打ち手が変わります。
- 時短から通常勤務へ戻った人の、その後2年の昇格率。 戻れば元に戻るのか、戻らないのかを確認します。
- 時短勤務者が担当している業務の範囲の変化。 等級や賃金より先に動くのは、担当業務です。担当から外れた業務が、時短を終えたあとに戻ってきているかどうかまで見てください。
いずれも人事システムのデータから出せますが、そのままの形では出てきません。等級と勤務形態と年次を突き合わせる必要があります。
集計のときに決めておくことが2つあります。ひとつは時短勤務者をどの時点で数えるかです。年度末時点の在籍者だけで見ると、年度の途中で時短を終えた人が落ちます。もうひとつは比較相手をどう選ぶかです。全社平均と比べると年次の構成が違うため、差が出て当然になります。同じ年次・同じ職種で、時短の経験がない人と比べてください。
この2つを決めずに出した数字は、施策の根拠になりません。「時短勤務者の昇格率が低い」という結果が、時短の影響なのか年次構成の影響なのか、区別がつかないからです。
Floraの支援:時短の先で何が起きているかを見る
制度と給付が整っても、時短を選んだ人のキャリアがどうなっているかは、集計しなければ見えません。「時短勤務者の人数」は人事システムから出ますが、「時短を選んだ人が5年後にどの等級にいるか」は出てきません。
Floraのダイバーシティデータプログラムは、人事データを整理して、どの段階で差がついているのかを可視化するところから支援します。時短勤務の前後で何が変わっているかを、施策を決める前に確認できます。
まとめ
育児時短就業給付金は、2歳に満たない子を養育するために時短勤務をし、賃金が低下した場合などに支給される雇用保険の給付で、2025年4月1日に創設されました。育休から引き続いて時短を開始したか、開始日前2年間に被保険者期間が12か月あることが要件です。
対象が2歳未満である一方、法律上の短時間勤務制度は3歳未満、柔軟な働き方の措置は3歳から小学校就学前を対象としています。給付が先に終わるタイミングを、本人に事前に伝えられる運用にしておいてください。
よくある質問
育児時短就業給付金の対象になる子の年齢は。
育児休業を取らずに時短だけを始めた場合も対象になりますか。
時短にしても賃金が下がらない場合はどうなりますか。
支給額はいくらですか。





