上場企業の女性管理職比率は平均10.7%|2026年3月期の有報で自社の位置を読む
2026年 10月 26日

女性管理職比率とは、管理的地位にある労働者のうち女性が占める割合です。2026年3月期の有価証券報告書を集計した大和総研の分析(2026年10月23日、1,716社)では、上場企業の女性管理職比率の平均は10.7%、中央値は7.1%で、10%未満の企業が過半数を占めました。自社の数字が「平均より上か下か」だけを見ると、判断を誤ります。平均を押し上げているのは一部の企業で、業種によって水準が8倍以上違うからです。この記事では、平均と中央値、業種別の順位、男女間賃金格差との関係を押さえたうえで、自社の数字をどの基準と比べ、有報で何を説明するかを整理します。
女性管理職比率の平均は10.7%、中央値は7.1%
大和総研「日本の上場企業における女性管理職比率と男女間賃金格差の現状と変化」(2026年10月23日)は、2026年3月期の有価証券報告書に記載された女性管理職比率を、データが取れた1,716社について集計しています。
| 指標 | 値 |
|---|---|
| 平均値 | 10.7% |
| 中央値 | 7.1% |
| 最大値 | 98.3% |
| 最小値 | 0%(52社) |
| 10%未満の企業 | 過半数 |
出典:大和総研(2026年10月23日)、各社有価証券報告書(2026年3月期)より。N=1,716。
平均が中央値を3.6ポイント上回っています。女性管理職比率が高い一部の企業が平均を引き上げており、「普通の上場企業」の水準は7%前後と読むほうが実態に近いです。分布を見ると10%未満の区分に企業が集中し、10%台に入ると企業数が急に減ります。10%を超えているだけで、上場企業の中では上位半分に入ります。
政府目標は「2020年代の可能な限り早期に指導的地位に占める女性の割合30%程度」です。中央値7.1%との差は23ポイント近くあり、上場企業全体で見ても目標とは遠い位置にあります。
業種別に見ると、空運業27.3%から鉄鋼3.3%まで
東証33業種分類で業種別平均を並べると、幅は8倍以上あります。
| 女性管理職比率が高い10業種(順) | 低い10業種(順) |
|---|---|
| 空運業(27.3%) | 鉄鋼(3.3%) |
| サービス業 | 建設業 |
| その他金融業 | 金属製品 |
| 小売業 | 輸送用機器 |
| 保険業 | ゴム製品 |
| 銀行業 | ガラス・土石製品 |
| 医薬品 | 機械 |
| 証券、商品先物取引業 | パルプ・紙 |
| 情報・通信業 | 鉱業 |
| 精密機器 | 電気・ガス業 |
出典:同レポート 図表2・図表3。順位は業種別平均値。括弧内は本文に記載された値。
製造業の多くは全業種平均10.7%を下回ります。機械、電気機器、輸送用機器、金属製品、建設業といった業種で6%や7%なら、業種内では珍しくありません。逆にサービス業や小売業で7%なら、業種内では下位です。自社の数字は、全業種平均ではなく自社の業種平均と並べて読む必要があります。
もう一点、同じ業種でも企業数が少ないところは平均が動きやすいことに注意してください。空運業は3社、鉱業は2社、石油・石炭製品は4社です。業種平均が自社1社の動きで変わる規模です。
男女間賃金格差の平均は69.4%、管理職比率が高くても縮まらない
同じレポートは男女間賃金格差(全労働者、女性の平均賃金÷男性の平均賃金)も集計しています。データが取れた1,688社の平均は69.4%で、60%台と70%台に企業が集中しています。最大は118.6%、最小は28.9%でした。
業種別に見ると、格差が最も小さいのは情報・通信業の76.3%、最も大きいのは空運業の47.0%です。空運業は女性管理職比率が最も高い業種でもあります。管理職の女性比率が高いことと、従業員全体の賃金格差が小さいことは、別の話です。レポートも、女性管理職比率が高い業種で男女間賃金格差が大きい例があることを指摘し、管理職層だけでなく採用から配置、昇進・昇格までの各段階と、総合職・一般職の区分そのものを見直す必要があるとしています。
自社の賃金格差を同じ定義で出す手順は「男女間賃金差異の計算方法|実務担当者向けガイド」に、計算は「男女間賃金差異 計算ツール」にまとめています。
2024年3月期からの変化は、女性管理職比率で0.9ポイント
2024年3月期から2026年3月期までの2年間で、上場企業全体の女性管理職比率の平均は0.9ポイント程度、男女間賃金格差の平均は2.1ポイント程度改善しました。レポートの表現を借りれば「改善幅は非常に小さく、ほとんど変わっていないともいえる」水準です。
変化の大きい業種は偏っています。女性管理職比率の上昇幅が最も大きかったのは空運業で約6ポイント、男女間賃金格差が最も縮んだのは保険業で約8ポイントでした。平均で0.9ポイントしか動いていない中で、特定の業種が大きく動いています。自社の業種が動いている側なのか、止まっている側なのかで、同じ「前年比+0.5ポイント」の評価は変わります。
なお、この経年比較は共通サンプルではなく、年ごとに構成企業が入れ替わっています。自社の推移を見るときは、自社の定義を固定したうえで3期分を並べてください。
自社の数字を、どの基準と比べるか
比較の基準を一つに決めないと、同じ数字から「上位」とも「下位」とも言えてしまいます。順番としては次の3段です。
- 中央値7.1%と比べる。 まず「上場企業の真ん中」より上か下かを見ます。平均10.7%は一部の企業に引き上げられた値なので、最初の基準には向きません。
- 自社の業種平均と比べる。 製造業なら業種平均は全業種平均より低く、サービス業や小売業なら高くなります。附表1の業種別平均値(レポート10ページ)に自社を置いてください。
- 分母の定義を揃える。 有報の女性管理職比率は女性活躍推進法の定義(課長級以上)が基本ですが、課長代理や課長補佐を含めるかどうかで数字が1ポイント以上動きます。比べる前に、自社がどの定義で出しているかを確認します。定義と注記の書き方は「女性管理職比率の公表|算出方法・注記の書き方と、数字を上げる前に見るべき3つの指標」をご覧ください。
サンプルデータ・架空のグループで置いてみます。サンライズHD(製造業を中核とする12社、従業員8,420名)の女性管理職比率は9.8%です。上場企業の中央値7.1%より上、平均10.7%より下に位置します。製造業の業種平均が全業種平均を下回ることを踏まえると、業種内では中位より上です。ただ、経年では9.2%から9.8%へ0.6ポイントの改善にとどまり、上場企業全体の改善幅0.9ポイントを下回ります。「業種内では悪くないが、改善ペースは市場より遅い」という読み方になります。
目標年までに新任管理職の何%を女性にすれば届くかは、「女性管理職比率 シミュレーター」で試算できます。
比率より先に、説明が足りていない
大和総研は2024年3月期の有報の記述内容も分析しており、男女間賃金格差については多くの企業が説明を書いている一方、女性管理職比率については説明が不足する傾向を指摘しています。数字を出すだけでは、投資家にも従業員にも「なぜ低いのか」「いつ上がるのか」が伝わりません。
2026年3月期からは有報の「従業員の状況」が「従業員の状況等」に変わり、「人材戦略に関する基本方針等」として、企業戦略と関連づけた人材戦略の記載が求められるようになりました。女性管理職比率の低さを人材戦略の中でどう位置づけるかを、文章で書く場所が有報の中にできたことになります。
説明に使える材料は、比率の一段下にあります。管理職の女性比率が9.8%でも、その2つ手前の主任・担当層では45.3%、係長・課長代理層では24.1%というように、どの段で女性が減っているかを数えると、原因が「候補者がいない」のか「候補者はいるが昇進していない」のかが分かれます。段ごとの数え方は「女性管理職パイプラインの可視化|階層別の男女昇進率の出し方」に、評価が同等でも昇進率が違う例は「女性の係長昇進が進まない理由|評価は同等、処遇だけが違う」にまとめています。有報に載せる3項目の出し方は「人的資本開示の女性活躍3項目」をご覧ください。
Floraの支援:数字の背景を人事データで説明する
Flora株式会社の「ダイバーシティデータプログラム」は、評価・昇進・給与・勤怠・エンゲージメントの人事データを横断し、女性管理職比率が上がらない段とその要因を特定して、有報や統合報告書に書ける説明と、指標・目標の設計まで支援します。比率を1ポイント上げる施策より先に、どの段で何が起きているかを数字で示すところから始めます。
まとめ
- 2026年3月期の上場企業1,716社の女性管理職比率は平均10.7%、中央値7.1%。10%未満が過半数で、10%を超えれば上位半分に入る(大和総研、2026年10月23日)。
- 業種差は空運業27.3%から鉄鋼3.3%まで。自社の数字は業種平均と並べて読む。
- 男女間賃金格差の平均は69.4%。女性管理職比率が高い業種でも格差が大きい例があり、2つは別々に見る。
- 2年間の改善は女性管理職比率で0.9ポイント。自社の改善ペースを市場と比べる。
- 比較の順番は、中央値、業種平均、定義の確認。有報では数字より説明が不足している。
よくある質問
自社の女性管理職比率が8%です。上場企業の中では低いほうですか?
平均10.7%と中央値7.1%、目標を立てるときはどちらを使えばよいですか?
女性管理職比率が上がれば、男女間賃金格差も縮まりますか?





