産前産後休業とは|期間の決まり方と、会社が行う手続き
2026年 9月 28日

産前産後休業とは、労働基準法にもとづく母性保護のための休業です。産前は本人の請求により、産後は請求の有無にかかわらず、会社が就業させてはならない期間として定められています。
この記事は人事・労務の担当者向けに、期間がどう決まるのか、会社側で何をするのかを整理したものです。産前と産後で性格が違うこと、そして産後は本人が働きたいと言っても原則として働かせられないことが、実務上の要点になります。
産前産後休業の産前と産後は、性格が違う
| 産前休業 | 産後休業 | |
|---|---|---|
| 期間 | 出産予定日以前6週間(多胎妊娠は14週間) | 出産日の翌日から8週間 |
| 取得のしかた | 本人が請求して取得する | 請求は不要。会社が就業させてはならない |
| 本人が働きたい場合 | 請求しなければ働ける | 6週間は不可。6週間経過後は条件つきで可 |
産前は権利、産後は禁止と覚えると整理がつきます。就業規則に書くときも、この違いが反映されているかを確認してください。
産前休業は本人の請求が前提です。請求しなければ出産直前まで働くこともできます。一方、産後休業は労働基準法が就業させることを禁じている期間で、本人の希望では動かせません。
産後8週間のうち、6週間を経過した後については、本人が請求し、かつ医師が支障がないと認めた業務に就かせることは差し支えありません。ただしこれは例外的な取扱いで、原則は8週間です。
期間の起算がずれる仕組み
実務でつまずくのが起算日です。
産前休業は出産予定日を基準に数えます。予定日以前6週間(多胎妊娠は14週間)です。
産後休業は実際の出産日の翌日から数えます。8週間です。
したがって、出産が予定日より遅れた場合、産前休業はその分だけ長くなります。予定日から実際の出産日までの期間も産前休業に含まれるためです。逆に予定日より早く生まれた場合は、産前休業は短くなります。
産後休業は、出産が早くても遅くても8週間で変わりません。ここが産前と違う点です。
社会保険料免除の対象となる産前産後休業期間は、日本年金機構の説明では、出産の日(出産の日が出産の予定日後であるときは出産予定日)以前42日、多胎妊娠の場合は98日から、出産の日後56日までの間で、妊娠または出産を理由として労務に従事しなかった期間とされています。42日が6週間、98日が14週間、56日が8週間にあたります。
妊娠中に使える、産休以外の制度
産前休業に入る前の期間にも、母性健康管理のための仕組みがあります。健康診査等を受けるための時間の確保、医師等からの指導事項を守るための措置(勤務時間の変更、勤務の軽減など)です。医師等の指導内容を事業主に伝えるための「母性健康管理指導事項連絡カード」が用意されています。
産休は産前6週間からですが、つわりや切迫早産の兆候はそれより前に起こります。産前6週間より手前を空白にしないことが、就業継続には効きます。制度の存在を妊娠報告の時点で伝えておいてください。
会社が行う手続き
社会保険料の免除
産前産後休業期間中の健康保険料・厚生年金保険料は、被保険者・事業主の両方の負担が免除されます。事業主が産前産後休業期間中に「産前産後休業取得者申出書」を提出することで免除されます。自動ではありません。
免除された期間は、将来、被保険者の年金額を計算する際に保険料を納めた期間として扱われます。本人から年金への影響を聞かれた場合は、この点を伝えてください。
提出先は日本年金機構(事務センターまたは年金事務所)です。産休から育休へ続く場合は、育児休業等についても別途届出が必要になります。育休側のルールは育休中の社会保険料免除にまとめました。
出産手当金
健康保険から出産手当金が支給されます。ハローワークが扱う制度ではなく、加入している健康保険等の運営機関が窓口です。支給額や要件についての問い合わせは、そちらに案内してください。
人事側で押さえておくのは、この期間の給与をどう扱うかです。産前産後休業中を無給とするか、一部を支給するかは会社が決められますが、支給の有無や額によって出産手当金の扱いが変わることがあります。就業規則の定めと、保険者への確認を先に済ませておいてください。
予定日と実際の出産日がずれた場合の変更
産前産後休業の期間を変更した場合や、予定より早く終了した場合は、変更の届出が必要になります。出産日が予定日とずれるのは珍しいことではないため、届出は出産後に確定した日付で出す運用にしておくと、やり直しが減ります。
人事が押さえる実務の順番
- 妊娠の報告を受けたら、予定日を確認して産前休業の開始可能日を伝える。 本人の請求が前提の制度なので、いつから取れるかを知らせないと請求できません。
- 産後8週間は就業させられないことを、本人と現場の両方に伝える。 本人が「早く戻りたい」と言うケース、現場が「少しだけ」と頼むケースの両方が起こります。
- 社会保険料免除の届出を、休業期間中に済ませる。 期間が過ぎてからでは間に合いません。
- 出産後に日付を確定し、必要な変更届を出す。
- 復帰の面談を、復帰直前ではなく産休中に一度入れる。 保育園の状況、勤務時間の希望、育休に入るかどうかを早めに把握しておくと、体制の準備ができます。
この5つのうち、抜けやすいのは1と3です。1は本人が請求する制度であること、3は期間中に届け出る必要があることが、どちらも見落とされやすい性質だからです。妊娠報告を受けた時点のチェックリストに両方を入れてください。
産休の前後で、関わる窓口が変わる
もうひとつ実務として面倒なのは、関わる窓口が制度ごとに違うことです。
産前産後休業そのものは労働基準法の定めで、会社の就業規則の範囲です。社会保険料の免除は日本年金機構と健康保険の保険者。出産手当金は加入している健康保険等の運営機関。育児休業給付と出生後休業支援給付金はハローワーク。育児・介護休業法上の制度は都道府県労働局です。
本人から見ると、同じ「出産にまつわる手続き」が4つの窓口に分かれています。人事が最初に渡す案内に、どの制度がどこの窓口かを一覧にしておくと、その後の問い合わせが大きく減ります。
産後パパ育休を含む配偶者側の制度は男性の産休(産後パパ育休)とはで、出生直後の給付は出生後休業支援給付金とはで扱っています。
産後の体調は、8週間で戻るわけではない
制度上の産後休業は8週間ですが、復帰後の体調は別の話です。睡眠不足、授乳、体力の回復状況は人によって幅があります。
産後の復職期に起きやすい不調と、企業側でできる配慮は産休・育休明けに見落とされる健康課題にまとめています。
人事として持っておくとよい前提は、産休・育休の制度が終わることと、本人の状態が戻ることは別だということです。復帰後の数か月に何が起きているかを把握していないと、離職の理由が見えません。
復帰直後の面談で聞く内容も、勤務時間の希望だけでは足りません。通院の予定があるか、睡眠がとれているか、通勤の負担が変わっていないか。本人から言い出しにくい項目ほど、聞かれなければ出てきません。
また、産後の不調は本人が「体力が落ちただけ」と説明することが多く、医療につながらないまま長引くことがあります。会社が診断するわけにはいきませんが、相談できる先を示しておくことはできます。
よくある失敗
産後休業を本人の希望で短縮する。 6週間は例外なく就業させられません。6週間経過後も、本人の請求と医師が支障ないと認めた業務であることの両方が必要です。
産前休業の案内をしない。 請求が前提の制度なので、知らなければ取得されません。「言われなかったので働き続けた」は会社側の案内不足です。
免除の届出を休業終了後に出す。 産前産後休業期間中に提出する必要があります。休業に入る連絡を受けた時点で処理してください。
多胎妊娠の14週間を見落とす。 産前休業は多胎妊娠の場合14週間です。通常の6週間で案内してしまう誤りが起きやすいところです。社会保険料免除の対象期間も、多胎妊娠は42日ではなく98日で計算します。
出産日がずれたのに変更届を出さない。 産前休業の期間は出産日によって伸縮します。予定日ベースで出した届出のまま放置すると、免除される期間が実態と合わなくなります。
産休を「女性の制度」として案内を閉じる。 産前産後休業は出産する本人の制度ですが、同じ時期に配偶者側で使える制度があります。社内の案内を出産者本人にしか渡していないと、配偶者側の取得機会が失われます。
Floraの支援:産休前と復帰後をつなぐ
産休・育休の手続きは人事が行いますが、その前後で本人が抱える不安は手続きの外にあります。体調の変化、復帰後の働き方、キャリアへの影響。人事担当者が一人で受けるには範囲が広すぎます。
FloraのWellflowは、従業員が健康や両立について直接相談できる窓口と、管理職向けの研修を提供しています。産休に入る前と復帰後の両方で、人事のラインとは別の相談先を置けます。
まとめ
産前産後休業は、産前が出産予定日以前6週間(多胎妊娠は14週間)で本人の請求により取得するもの、産後が出産日の翌日から8週間で会社が就業させてはならないものです。産後6週間を経過した後は、本人の請求と医師の判断があれば就業できます。
会社側の手続きは、社会保険料免除の届出を休業期間中に行うことが中心です。免除期間は年金額の計算上、保険料を納めた期間として扱われます。出産日が予定日とずれた場合の変更届も忘れずに出してください。
よくある質問
産休はいつから取れますか。
産後はいつから働けますか。
出産が予定日より遅れた場合、産休は延びますか。
産休中の社会保険料はどうなりますか。





