管理職になりたくない理由|割合の調査データと、女性の昇進意欲の測り方

2026年 10月 29日

「管理職になりたくない」とは、今の会社で管理職を目指さない、あるいは打診されても引き受けたくないという従業員の意向のことです。内閣府が2023年に20〜69歳の20,000人に行った調査では、働いている人のうち「現在より上の役職に就きたい」と答えた割合は女性17.9%(7,131人)、男性33.1%(8,450人)でした。女性の8割以上、男性の3分の2が、上の役職を望んでいないことになります。ただ、この割合は「どう聞くか」「誰に聞くか」で大きく動きます。条件付きの選択肢を置くと「引き受けない」は少数派になり、等級や年齢をそろえると男女の差は縮みます。女性管理職比率の目標を持つ会社にとって、「女性が希望しない」で話を終えるのは早すぎます。この記事では、主な調査の数字と理由を整理し、自社の昇進意欲を測り直す方法をサンプルデータで示します。

管理職になりたくない人の割合:調査ごとの数字

主な調査を並べると、数字がそろわないことがまず分かります。

調査対象と人数聞き方女性男性
内閣府 男女の健康意識に関する調査(2023年)20〜69歳の有業者、女性7,131人・男性8,450人現在より上の役職に就きたいか就きたい 17.9%就きたい 33.1%
パーソル総合研究所 働く10,000人の就業・成長定点調査(2026年)有職者10,000人のうち一般社員・係長相当今後のキャリアとして「現在の会社で管理職になりたい」11.3%18.8%
21世紀職業財団 DEI推進状況調査(2024年)101人以上企業の正社員5,298人のうち総合職の一般社員(女性360人・男性621人)管理職になれるとしたらどう思うかなりたくない 47.2%なりたくない 39.1%
東京都 男女雇用平等参画状況調査(2025年)都内30人以上事業所の勤続5年以上の非管理職(女性556人・男性508人)上司から薦められたら引き受けるか引き受けない 24.1%引き受けない 11.0%

パーソル総合研究所の調査では、「現在の会社で管理職になりたい」は全体で15.7%で、2018年の21.7%から下がっています。下がったのは主に男性で、2018年から2026年にかけて男性は27.5%から18.8%へ8.7ポイント、女性は12.3%から11.3%へ1.0ポイント下がりました。男女の差が縮んだのは、女性の意欲が上がったからではなく、男性の意欲が落ちたためです。

一方、東京都の調査で「引き受けない」とはっきり答えた女性は24.1%にとどまり、36.0%は「仕事内容や条件によっては引き受ける」と答えています。二択で聞けば「なりたくない」に入る人の多くが、条件次第では引き受ける層だということです。

政府の第6次男女共同参画基本計画(2026年3月13日閣議決定)は、2030年に係長相当職33%、課長相当職24%、部長相当職15%という目標を置いています。2024年の現状は24.4%、15.9%、9.8%です。目標との差を「本人が希望しない」で説明する前に、数字の中身を見ておく必要があります。

管理職になりたくない理由

理由を最も細かく聞いているのは21世紀職業財団の調査です。総合職の一般社員で「なりたくない」と答えた人に、理由ごとに当てはまるかを尋ねています。

理由女性(170人)男性(242人)
責任が重くなるから89.1%87.9%
長時間労働になるから/家庭・プライベートとの両立が難しくなるから83.9%74.8%
管理職になるための能力、スキル、経験が不足しているから80.9%66.1%
性格的に管理職に向いていないから77.1%73.3%
漠然とした不安があり、自信がないから72.5%58.3%
あまり給料は上がらないから55.1%56.9%

責任の重さは男女とも9割近くが挙げており、差はほとんどありません。女性で目立って高いのは、能力やスキル・経験の不足(14.8ポイント差)と、自信のなさ(14.2ポイント差)、そして長時間労働や両立の難しさです。経験の不足は、本人の資質だけでなく、どんな仕事を任されてきたかでも決まります。係長への昇進の段階で何が起きているかは「女性の係長昇進が進まない理由|評価は同等、処遇だけが違う」で扱っています。

労働政策研究・研修機構(JILPT)の2012年の調査(300人以上企業の一般従業員)でも、課長以上への昇進を望まない理由の1位は、女性の一般従業員(1,985人)が「仕事と家庭の両立が困難になる」40.0%、男性の一般従業員(597人)が「メリットがないまたは低い」41.2%でした。女性の24.0%は「周りに同性の管理職がいない」も挙げています。

女性の昇進意欲は低いのか:数字の前に確かめる4つのこと

「女性は昇進を望まない」という結論は、次の4つを確かめると印象が変わります。

  1. 等級をそろえる。 JILPTの2012年の調査では、課長以上への昇進を希望する女性は、一般従業員では10.9%(2,238人)でしたが、係長・主任では29.4%(932人)と約3倍でした。役職のない女性が多い会社で全体を集計すると、意欲は低く出ます。
  2. 年齢をそろえる。 内閣府の2023年の調査では、正規雇用・非管理職の「上の役職に就きたい」の男女差は、20〜39歳で21.4ポイント(女性27.1%・男性48.5%)、40〜69歳では4.0ポイント(女性19.8%・男性23.8%)でした。年代が上がると男性の意欲が大きく下がるためです。
  3. 選択肢をそろえる。 「推薦されればなりたい」を選択肢に置いた21世紀職業財団の調査では、総合職の一般社員でこれを選んだのは女性33.9%、男性32.0%で、女性のほうがわずかに高くなっています。「なりたい」だけを数えると、この層が抜け落ちます。
  4. 一時点で決めつけない。 同じ調査で、現在の女性管理職410人のうち29.8%は、管理職になる前は「なりたくないと思っていた」と答えています。男性管理職500人では22.6%です。意欲は、任された仕事や周囲の支えで変わります。

候補者が少ないように見えるときの育て方は「女性管理職の候補者育成|昇進率を上げる前に候補者プールを整える3つのこと」にまとめています。

健康と昇進意欲の関係

昇進意欲は、健康とも結びついています。内閣府の同じ調査を集計した男女共同参画白書(令和6年版)によると、20代の女性で「上の役職に就きたい」と答えた割合は、自分が健康だと思う人で34.8%(402人)、健康でないと思う人で12.1%(66人)でした。体の不調がある40代の女性では、その症状に十分対処できている人で34.1%(91人)、できていない人で16.9%(278人)です。白書も、これは相関であって因果ではないとしています。

同じ調査で、身体や心の不調が理由で「上の役職に就くことを諦めた」経験がある人は、女性3.5%、男性6.7%でした。一方、更年期の症状の有無による差は小さく、40代の女性で症状がある人14.7%、ない人18.9%、50代では差がほとんどありません。更年期で管理職を辞退する人の実態は「更年期による女性管理職の離職・昇進辞退|企業が取り組むべき支援策」で扱っています。

昇進意欲がある人に「どんなことがあれば管理職として働けそうか」を聞いた設問では、20〜39歳の女性(601人)の34.8%が「管理職でもきちんと休暇がとれること」、28.1%が「出産・子育てと管理職として働くことへの両立支援」、28.0%が「フレックスタイムなど始業・終業時間が柔軟」を挙げています。意欲を支える条件は、制度と働き方の側にあります。

会社が「本人が希望しない」と答えるとき

会社側の回答でも、「希望しない」はよく出てきます。厚生労働省の平成25年度雇用均等基本調査では、女性管理職が少ない役職区分がある企業(30人以上)の21.0%が理由に「女性が希望しないため」を挙げました。この設問はこの年を最後に調査から外れています。東京都の2025年の調査では、女性管理職が少ない事業所(437か所)の27.5%が同じ理由を挙げ、行動計画の目標を達成できていない事業所(84か所)では「管理職を希望する女性従業員が少ない」が46.4%で最も多い課題でした。

経済産業研究所の山口一男氏は、ホワイトカラー正社員の管理職割合の男女格差を分析した2013年の論文で、人事担当者に「女性管理職が少ない理由」を尋ねる調査は、すでに行われた選択の正当化を伴いやすいと指摘しています。同じ論文では、教育・年齢・勤続年数の男女差で説明できる格差は課長以上で約2割にとどまりました。会社の回答だけで、原因を本人の意向に求めるのは危ういということです。女性管理職が増えない理由の全体像は「女性管理職が増えない本当の理由|データで見る「壁」と打ち手」をご覧ください。

自社の昇進意欲を測り直す:サンプルデータで見る

ここからは、サンプルデータ・架空のグループ「サンライズHD」(12社・従業員8,420名)で、同じ回答が分け方によってどう見え方を変えるかを示します。主任・担当層2,130名(女性962名・男性1,168名)に「将来、管理職(課長級以上)を目指したい」と聞くと、「そう思う」「ややそう思う」は女性26.1%、男性45.1%で、差は19.0ポイントでした。

この回答を、勤怠データから出した「所属部署の課長の月平均残業」と掛け合わせると、次のようになります。

所属部署の課長の月平均残業女性男性差
30時間未満35.1%(288名)49.9%(409名)14.8ポイント
30〜45時間27.0%(337名)45.2%(409名)18.2ポイント
45時間超17.5%(337名)39.4%(350名)21.9ポイント

目の前の課長が長く働いている部署ほど、意欲は下がります。下がり方は女性で17.6ポイント、男性で10.5ポイントです。女性回答者の35.0%が45時間超の部署にいます。未就学児を育てている女性では14.7%、そうでない女性では30.6%でした。

設問に条件を付けて「管理職の業務量が今より減るなら目指したい」と聞き直すと、女性41.5%、男性53.1%で、差は11.6ポイントに縮みます。1問だけで聞いた「意欲がない」の一部は、今の管理職のなり方では目指さない、という答えです。

自社で測り直すときは、次の順に進めると読み違えが減ります。

  1. 意欲の回答を、等級と年代でそろえてから男女で比べる。
  2. 「業務量が減るなら」「推薦されたら」など、条件付きの設問を1問加える。
  3. 回答を勤怠や配属の記録と掛け合わせ、目の前の管理職の働き方との関係を見る。
  4. 同じ設問を毎年続け、昇進や異動のあとに意欲がどう動いたかを追う。

指標の置き方は「女性活躍推進のKPI設計|女性管理職比率だけでは足りない理由と指標例」も参考にしてください。

Floraの支援:意欲の数字を、人事データで読み直す

「女性が希望しない」という説明が正しいかどうかは、意欲の回答だけでは確かめられません。確かめるには、等級ごとの滞留年数、昇進の履歴、所属部署の働き方、育児や休職の記録といった人事データと突き合わせる必要があります。

Floraのダイバーシティデータプログラムは、在籍する社員全員の人事データを複数年にわたって横断的に分析し、昇進が止まっている段と、その段で何が起きているかを明らかにします。意欲や働きやすさのサーベイは、人事データの分析に重ねる追加の層として使えます。昇進意欲が低いという社内の見立てが、等級構成や働き方の差から来ているのかを分けて確かめたいときにご相談ください。

まとめ

管理職になりたくない人の割合は、調査の聞き方で大きく変わります。内閣府の2023年の調査で「上の役職に就きたい」は女性17.9%、男性33.1%ですが、東京都の2025年の調査で「引き受けない」とはっきり答えた女性は24.1%で、36.0%は条件次第で引き受けると答えています。

理由は男女とも責任の重さが最も多く、女性では経験の不足と自信のなさ、長時間労働と両立の難しさが目立ちます。等級、年齢、選択肢、時点をそろえると、男女の差は小さく見えることが多く、健康の状態とも結びついています。自社の数字は、意欲の回答を人事データと掛け合わせて読み直すところから始めてください。

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