出生後休業支援給付金とは|14日以上の要件と、人事が押さえる手続き
2026年 9月 28日

出生後休業支援給付金とは、2025年4月1日に創設された雇用保険の給付で、出生時育児休業給付金または育児休業給付金の支給を受ける人が一定の要件を満たした場合に、上乗せで支給されるものです。
単独では出ません。もとになる給付があって、その上に乗る形です。ここを押さえておかないと、社内の説明が噛み合わなくなります。「新しい給付ができたので申請したい」という相談を受けたときに、まず確認するのは産後パパ育休または育児休業を取得しているかどうかです。
給付率は13%、支給日数は最大28日間です。育児休業給付金の67%と合わせると給付率は80%になります。この記事では、支給要件、とくに誤解の多い配偶者の要件、そして企業側の手続きを整理します。
(出典:厚生労働省・都道府県労働局・ハローワーク「育児休業等給付の内容と支給申請手続」2026年8月1日改訂版)
なぜ「80%」と言われるのか
育児休業給付金の給付率67%に、出生後休業支援給付金の13%が上乗せされて80%になります。厚生労働省はこれを手取り10割相当と説明しています。
理由は3つあります。育児休業中は申出により健康保険・厚生年金保険料が免除されること。勤務先から給与が支給されない場合は雇用保険料の負担がないこと。そして育児休業等給付は非課税であることです。額面の80%でも、手取りベースでは休業前とほぼ同じになる、という計算です。
ただし休業開始時賃金日額には上限額があります。上限は毎年8月1日に改定されるため、高い賃金水準の従業員については「手取り10割」にならない場合があります。社内説明で10割と言い切ると、あとで食い違いが出ます。具体的な上限額はハローワークの最新の案内でご確認ください。
出生後休業支援給付金の支給要件は2つ
①本人が14日以上取得していること
対象期間中に、同一の子について、出生時育児休業給付金が支給される産後パパ育休、または育児休業給付金が支給される育児休業を、通算して14日以上取得していることが必要です。
対象期間は、「子の出生日または出産予定日のうち早い日」から「子の出生日または出産予定日のうち遅い日から起算して8週間を経過する日の翌日」までです。産後パパ育休の期間に育児休業給付金が支給される育児休業を取得している場合は、その日数も通算されます。
産後パパ育休そのものの制度は男性の産休(産後パパ育休)とはで扱っています。
②配偶者も14日以上取得していること、または例外に当たること
配偶者も、同じ期間に通算して14日以上の育児休業を取得していることが必要です。ただし、子の出生日の翌日において「配偶者の育児休業を要件としない場合」に該当すれば、この要件は満たされます。
ここが実務で最も誤解されるところです。配偶者が子を出産している場合、つまり被保険者が父親で子が養子でない場合は、子の出生日の翌日時点で配偶者は産後休業中にあたるため、②の要件を満たします。
例外に当たる主な事由は、配偶者が無業者である場合、配偶者が自営業者やフリーランスなど雇用される労働者でない場合、そして配偶者が産後休業中である場合です。
ただし、配偶者が無業者(専業主夫)である場合や、自営業者・フリーランス等で雇用される労働者でない場合は、確認書類として課税(非課税)証明書の提出が求められます。この確認書類について、マイナンバーを活用して地方税情報を取得・確認することで省略できるかを検証する試行運用も行われており、その場合は配偶者の同意書も必要になります。書類の準備に時間がかかる可能性があるため、該当しそうな従業員には早めに案内してください。
つまり通常の出産では、母親が育児休業を14日以上取得していなくても、父親は要件を満たします。「妻も14日取らないと夫はもらえない」という説明は誤りです。この誤解があると、取得をためらわせる方向に働きます。
対象期間の数え方は、予定日と出生日の両方で決まる
14日以上を数える「対象期間」は、次の2点で区切られます。
- 始まり:子の出生日または出産予定日のうち、早いほう
- 終わり:子の出生日または出産予定日のうち、遅いほうから起算して8週間を経過する日の翌日
早いほうで始まり、遅いほうから8週間で終わる。つまり予定日と実際の出生日がずれた場合、期間はどちらの方向にずれても広がる設計になっています。
予定日より早く生まれた場合は、出生日から始まって予定日の8週間後まで。予定日より遅く生まれた場合は、予定日から始まって出生日の8週間後まで。いずれも、想定より窓は狭くなりません。
実務では、予定日ベースで組んだ休業計画が出産のずれで崩れることを心配されがちですが、この給付の対象期間については心配が要りません。人事が確認すべきなのは期間の端ではなく、その中で通算14日に届いているかです。
支給されないケース
就労状況や賃金支払状況により、もとになる出生時育児休業給付金または育児休業給付金が不支給となった場合は、出生後休業支援給付金も支給されません。
出生時育児休業給付金には、休業期間中の就業日数が最大10日(10日を超える場合は就業した時間数が80時間)以下であることという要件があります。この「最大10日」は28日間の休業を取得した場合の日数で、休業期間が28日より短ければその日数に比例して短くなります。
休業中に少しだけ働いてもらう運用をしている場合、上乗せ分まで丸ごと失う可能性がある、ということです。就業日を入れる前に、日数と時間数の上限を確認してください。
現場で起きやすいのは、本人が「少しなら手伝えます」と申し出るケースです。善意で受けた結果、28日分の上乗せが消えることがあります。就業を入れるかどうかは本人の希望で決めてよい事項ですが、判断の前に上限と、超えたときに何を失うかを伝える必要があります。伝えずに受けた場合、あとから説明がつきません。
また、期間を定めて雇用される方については、子の出生日(出産予定日前に出生した場合は出産予定日)から起算して8週間を経過する日の翌日から6か月を経過する日までに労働契約の期間が満了することが明らかでないこと、という要件がもとの給付にあります。有期雇用の従業員から相談を受けたときは、契約期間の見込みも一緒に確認してください。
育児休業給付金の給付率が下がる時期との関係
育児休業給付金の給付率は、休業開始から一定期間は67%で、その後50%に下がります。出生後休業支援給付金の13%が乗るのは、子の出生直後の対象期間のうち最大28日分です。
厚生労働省の資料では、母親が産後休業・育児休業を続ける一方で、父親が出生直後に28日分の上乗せを受け、そのうえで両親それぞれが育児休業給付金を受け取っていく形が示されています。上乗せは出生直後にしか発生しないため、後ろにずらすと消えます。
「落ち着いてから取る」という選択は、この給付に関しては不利になります。取得時期の相談を受けたときに、人事が最初に伝えるべき情報です。
人事が押さえる手続きと説明の順番
手続きそのものは、育児休業給付の申請にあわせて行います。もとになる給付の受給資格確認・支給申請の流れに乗るため、別立ての新しい事務が増えるわけではありません。
変わるのは説明です。従業員に伝える順番を整理すると、次のようになります。
- まず、上乗せであることを伝える。 単独の制度ではなく、産後パパ育休または育児休業を取得したうえで条件を満たすと加算される給付です。
- 14日以上という線を先に伝える。 「数日だけ」の取得では対象になりません。取得日数の計画がそのまま給付額に効きます。
- 配偶者の要件の例外を必ず添える。 配偶者が産後休業中であれば要件を満たします。ここを省くと、「妻の職場の対応次第」と誤解されます。
- 就業日を入れる場合の上限を伝える。 休業中の就業が上限を超えると、もとの給付ごと不支給になります。
男性育休の制度全体と公表義務は男性育休とはと男性育休の義務化とはで扱っています。制度整備に使える助成金は両立支援等助成金とはにまとめました。出生時両立支援コース(子育てパパ支援助成金)が、男性の育児休業取得を対象としています。
この給付が変えるのは「何日取るか」
これまで男性の育児休業は、取得するかどうかが論点でした。公表義務の対象が従業員数300人超に広がり、取得率そのものは上がってきています。
一方で、取得日数は短いままという状態が各所で起きています。出生後休業支援給付金は、そこに14日という線を引きました。13日と14日では、28日分の上乗せがあるかないかが変わります。
人事の実務としては、取得率の集計と並べて取得日数の分布を見てください。5日未満に山があるなら、制度の存在ではなく、日数の設計と職場の受け止め方に手を入れる段階です。
Floraの支援:取りやすさは、制度の外側で決まる
給付の条件が整っても、職場が「2週間も抜けるのか」という空気であれば日数は伸びません。実際に効くのは、業務の引き継ぎが仕組みになっているかと、上司が日数の希望を先に聞けるかです。
FloraのWellflowは、管理職向けの研修と従業員向けの相談支援を提供しています。制度の説明ではなく、取得を前提とした職場の運用づくりのほうを支援できます。
なお、給付の支給可否を判断するのはハローワークです。要件の確認と申請は、最新の案内に沿って進めてください。
まとめ
出生後休業支援給付金は、出生時育児休業給付金または育児休業給付金への上乗せとして、最大28日間、給付率13%が支給される制度です。2025年4月1日に創設されました。
要件は、本人が対象期間に通算14日以上取得していることと、配偶者も14日以上取得しているか例外に該当することの2つです。通常の出産では配偶者は産後休業中にあたるため、父親は単独で要件を満たします。この点の説明を省かないことが、社内周知でいちばん効きます。
よくある質問
出生後休業支援給付金はいくら支給されますか。
妻が育児休業を取らないと夫は受給できませんか。
何日取得すれば対象になりますか。
育児休業中に少し働いても大丈夫ですか。





