ライフデザイン経営とは?|経産省の定義と健康経営度調査での新設項目、企業が取り組む5つの例
2026年 9月 10日

ライフデザイン経営という言葉が、健康経営の文脈で使われ始めています。経済産業省が2025年から普及に取り組んでいる考え方で、2026年7月の健康経営推進検討会では、令和8年度の健康経営度調査(大規模法人部門)にライフデザイン経営の認知度・必要性・取組内容を問うアンケート項目を新設する案が示されました。この記事では、経産省の定義、健康経営との関係を示すデータ、企業が取り組む5つの例、そして女性の健康との接点を解説します。
ライフデザイン経営とは何か:経産省の定義
経済産業省の資料(2025年12月、健康経営推進検討会 参考資料)は、ライフデザイン経営を次のように定義しています。社員がキャリアとライフを両立し、充実したライフデザインを実現できる環境を提供することで、人材の能力を最大限引き出し、企業価値向上につなげる経営のあり方、です。
もう1つの言葉が、ライフデザインサービスです。キャリア、資産形成、健康・病気、妊娠・出産などについて、客観的なデータやロールモデルといった正確で多様な情報や知識、スキルを得たうえで、個人が人生の計画を主体的・自律的に自己決定しやすくするために、必要な情報や気づきを提供するサービスを指します(出典:経済産業省委託事業「ライフデザインサービスの創出・育成に向けた検討会報告書」2025年3月)。
2つの関係は、企業がライフデザイン経営を実践する手段の1つとして、社員にライフデザインサービスを提供する、という形です。研修やゲーム型のプログラムで自分の人生設計を考える機会をつくる、健康・育児・介護のセミナーや専門家相談を福利厚生として提供する、といったものが実証事業で扱われています。
ライフデザイン経営と健康経営はどうつながるか
経産省が健康経営の一環としてライフデザイン経営を位置づける理由は、資料に明確に書かれています。働きがいのあるエンゲージメントが高い状態、働きやすい心理的ストレスが少ない状態は、心身の健康にとって重要な要素だ、という考え方です。
裏づけとして示されているのが、経産省の「従業員のウェルビーイング実現に向けた取組に関する調査」(2025年1月実施)の分析です。ライフデザイン支援に取り組んでいる企業は、従業員エンゲージメントが高く、新卒採用者の3年以内離職率が低く、新卒採用の応募倍率が高い傾向が、統計的に有意な差として示されています。あわせて、エンゲージメントが高まるとプレゼンティーズム(出勤しているが健康上の問題で業務効率が落ちている状態)が改善し、売上や営業成績が向上するという民間の調査も引用されています。
流れとしては、ライフデザイン支援がエンゲージメントを上げ、エンゲージメントが健康とパフォーマンスにつながる、という順です。エンゲージメントの測り方は「エンゲージメントサーベイとは?」、プレゼンティーズムの測り方は「プレゼンティーズムの測定方法」を参照してください。
令和8年度の健康経営度調査で何が新設されるか
2026年7月14日の第6回健康経営推進検討会の資料では、令和8年度の健康経営度調査(大規模法人部門)のアンケート項目として、ライフデザイン経営の認知度・必要性・取組内容を問う設問を新設する案が示されました。
押さえておきたいのは位置づけです。認定要件や評価項目ではなく、アンケート項目です。令和8年度は実態を把握する段階で、企業がどれだけ知っているか、必要だと考えているか、何をしているかを集めることが目的です。同じ検討会では、テーマ別ベストプラクティスや健康投資額もアンケート項目として扱われており、ライフデザイン経営はその並びにあります。
ただ、健康経営度調査の歴史を見ると、アンケート項目として実態把握された内容が数年後に評価項目に移ることは珍しくありません。今のうちに自社の取組を整理しておく意味は、そこにあります。
答え方の準備としては、次の5つの取組例のうち自社で実施しているものを一覧にし、それぞれの対象者数と利用実績を添えておくことです。認知度と必要性の設問には、経営層や人事がこの考え方をどう位置づけているかを社内で言葉にしておくと答えやすくなります。
企業が取り組む5つの例
経産省の資料は、ライフデザイン経営・ライフデザイン支援の主な取組例を5つに整理しています。
| 取組 | 内容の例 |
|---|---|
| ① 従業員の暮らしに寄り添った働き方改革や経営 | 営業時間の短縮、定休日の設定、残業ができなくても評価される仕組み、配属の配慮 |
| ② 制度があっても利用できない障壁を取り除く | プッシュ型の情報提供、業務のデジタル化、分業や多能工化で特定の人に仕事が集中しない状態をつくる |
| ③ 安心して休める、制度を利用できる雰囲気 | 休暇や福利厚生の周知と利用促進、ライフデザイン研修 |
| ④ ライフステージによる負担の有無にかかわらず、働きたい人を応援する | 出勤時間を細かく設定できる勤務制度、ベビーシッターや家事支援サービスの費用補助 |
| ⑤ 自律的なキャリア形成の支援 | 1on1でのキャリアとライフデザインの対話、働くうえで重視する価値観の尊重 |
資料に載っている企業事例では、店舗の閉店時間を1時間早めて定休日を設け、固定残業代を減らしてスキルで稼ぐ給与体系に変えた結果、女性の正社員が4倍に増えた小売業や、健康・育児・介護のセミナーと専門家相談を福利厚生として導入した旅行業の例が紹介されています。共通しているのは、制度を増やすことより、制度を使える状態をつくることに重点があることです。ダイバーシティ経営の実践と重なる部分は「ダイバーシティ経営の基礎と実践方法」にまとめています。
女性の健康とライフデザインの接点
ライフデザインサービスの定義に「健康・病気、妊娠・出産」が入っていることが示すとおり、女性の健康はライフデザインの中心にあります。経済財政運営と改革の基本方針2026の原案でも、更年期世代の女性への医療の推進、プレコンセプションケア推進5か年計画の工程表の策定と実行、睡眠対策を含む健康経営の推進が並んで挙げられています。
企業の実務では、次の3つが接点になります。
- 妊娠・出産の時期を本人が判断するための情報。 妊娠のしやすさと年齢の関係、不妊治療の実際、卵子凍結の選択肢を、キャリアの計画と同じ場で扱います。企業の不妊治療支援は「不妊治療への企業の支援制度」、ブライダルチェックの補助は「ブライダルチェック費用を企業が補助する意味」を参照してください。
- 更年期と介護が重なる年代への備え。 40代後半から50代は、更年期の症状と親の介護が同じ時期に来ます。その時期の働き方を事前に考える機会が、ライフデザイン研修の役割です。介護との両立は「家族介護とは|仕事との両立と企業支援策」にまとめています。
- 男性を含めて設計する。 定義は性別を問いません。対象を女性に限った瞬間に、ライフデザインは福利厚生の一項目に戻ります。男性の育児休業や介護、男性の更年期も同じ枠で扱うと、女性向けの施策と受け取られずに済みます。
よくある失敗
福利厚生サービスを契約して終わる。 サービスの提供は手段で、目的は社員が自分の人生を計画し、必要な制度を使える状態です。利用率と、利用した人の変化を追ってください。
若手向けのキャリア研修だけにする。 ライフデザインは全年代の課題です。更年期・介護・定年後を含めた設計にしないと、40代以上の社員には届きません。
健康経営と別の担当が進める。 経産省が健康経営の一環と位置づけているとおり、エンゲージメント、健康、ライフデザインは同じデータで測れます。担当を分けると、効果の説明が分断されます。
取組を一覧にしていない。 5つの取組例に当てはまるものは、多くの企業ですでに何かしら動いています。名前がついていないだけで、令和8年度の設問に答えられないのはもったいない状態です。
Floraの支援:Wellflow
Flora株式会社の「Wellflow」は、従業員向けのヘルスケアアプリと管理職・全社員向けの研修、導入前後を同じ指標で測る効果検証サーベイを組み合わせた健康経営支援サービスです。研修では、月経・妊娠・不妊治療・更年期を含む健康の基礎知識を、キャリアとライフの計画と同じ場で扱い、男性を含む全社員向けと管理職向けに分けて設計します。サーベイでは、エンゲージメントとパフォーマンス発揮度を年代・性別ごとに測り、ライフデザイン支援の前後で何が変わったかを示します。生理痛体験研修とあわせて、これまでに150社以上に導入されています。
まとめ
ライフデザイン経営は、社員がキャリアとライフを両立できる環境を提供して企業価値につなげる経営のあり方で、経産省が2025年から普及を進め、令和8年度の健康経営度調査にアンケート項目が新設される見込みです。ライフデザイン支援に取り組む企業はエンゲージメントが高く離職率が低い、というデータが健康経営との接点になっています。
企業の取組は、働き方改革、制度を使える状態づくり、休める雰囲気、ライフステージにかかわらず働ける仕組み、自律的なキャリア支援の5つです。女性の健康は妊娠・出産、更年期、介護のすべてでライフデザインの中心にあり、男性を含めた設計にすることが実務の要点です。
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よくある質問
ライフデザイン経営は健康経営優良法人の認定要件になりますか。
ライフデザインサービスとは、具体的にどんなサービスですか。
女性活躍の施策とは何が違いますか。





