労働基準法改正の議論|連続勤務・インターバル・つながらない権利の現在地

2026年 9月 28日

労働基準法の改正に向けた議論は、厚生労働省の労働政策審議会労働条件分科会で続いています。2026年9月時点で、改正法は成立しておらず、施行日も決まっていません。

この記事はその前提で書いています。検索すると「2026年改正」「義務化」といった見出しが並びますが、確定している内容と検討中の内容が混ざりがちです。ここでは、いま何が決まっていて何が決まっていないのかを分けて整理します。

対象は、労働時間法制の具体的課題として分科会で扱われている4つのテーマです。法定休日・連続勤務規制、勤務間インターバル、つながらない権利、そして副業・兼業の労働時間通算です。いずれも人事の実務に直接かかる論点ですが、対応の必要度は同じではありません。

いま確定していること、していないこと

テーマ現在の法的な位置づけ
連続勤務規制法定休日のルールはあるが、連続勤務日数の上限を直接定める規定はない。分科会で検討中
勤務間インターバル労働時間等設定改善法にもとづく努力義務。義務化は検討中
つながらない権利日本の法律に規定はない。分科会で検討中
副業・兼業の労働時間通算現行は通算する取扱い。見直しが検討中

この4つはいずれも、現時点で新たな義務が発生しているものではありません。企業として今すぐ対応しなければ違法になるものは、この中にはありません。

一方で、勤務間インターバルは努力義務としてすでに存在します。努力義務は「やらなくてよい」という意味ではなく、措置を講ずるよう努めることが法律に書かれている状態です。

労働基準法の改正で議論されている4つの論点

法定休日と連続勤務規制

現行の労働基準法は、毎週少なくとも1回の休日、または4週間を通じ4日以上の休日を与えることを求めています。この定め方だと、週の初めと次の週の終わりに休日を置くことで、理論上は長い連続勤務が成立します。

分科会では、連続勤務の上限をどう扱うかが論点になっています。日数をどこに置くか、例外をどう設けるかは決まっていません。

実務の側から見ると、連続勤務が生まれるのは制度の設計よりシフトの組み方であることがほとんどです。交替勤務のある職場、繁忙期に応援を出す職場、少人数で回している拠点。同じ会社の中でも、起きる場所は限られます。全社の平均労働時間には表れないため、勤怠データを連続勤務日数で並べ替えないと見つかりません。

勤務間インターバル

終業時刻から次の始業時刻までの間に一定時間以上の休息を確保する仕組みです。現在は労働時間等設定改善法の努力義務で、義務化するかどうか、するとして何時間に設定するかが論点です。

実務としては、制度の設計そのものは今の法律のもとでもできます。休息時間の設定、勤務時間の繰り下げか働いたものとみなすか、例外の扱いといった決めるべき項目は、義務化を待たなくても整理できます。義務化された場合、猶予期間があっても準備期間としては短いことが多いため、先に項目を洗い出しておくと差が出ます。導入率、休息時間の水準、助成金の区分は勤務間インターバル制度とはにまとめています。

つながらない権利

勤務時間外の業務連絡に応じない権利を指します。分科会の資料では、業務時間外の連絡に関し、労働者が業務時間外に安心して休める観点から、一部の国における取扱いを参考に検討が進められています。

日本の法律に規定はありません。したがって「つながらない権利が義務化された」という説明は、2026年9月時点では誤りです。

ただし、この論点は法律を待たずに社内で扱えます。時間外のメールやチャットに返信する義務がないことを明示するだけでも、実態は変わります。就業規則ではなく運用ルールとして定めている会社もあります。

運用で決めるときに効くのは、送る側の扱いです。返信しなくてよいと受け手に伝えるだけでは、送られた通知は残ります。送信予約を標準にする、緊急度を件名で区別する、といった送り手側のルールのほうが、実際の休息につながります。

副業・兼業の労働時間通算

現行では、複数の事業場で働く場合、労働時間を通算して割増賃金を計算する取扱いになっています。これが副業の受け入れをためらわせる要因として指摘され、見直しが議論されています。

こちらも結論は出ていません。

論点は、割増賃金の負担を誰が負うかに集約されます。通算するという現行の取扱いのもとでは、後から雇い入れた側が法定労働時間を超える部分の割増賃金を負担することになり、副業人材を受け入れる側の負担が重くなります。一方で通算をやめれば、合計の労働時間に歯止めがかかりにくくなります。健康確保と受け入れやすさのどちらを優先するかという構造です。

自社が副業を認めている場合も、他社の副業を受け入れている場合も、いまの取扱いは変わっていません。運用を先に変えないでください。

検討の経緯と、いまどこにいるか

このテーマは、2024年から2025年にかけて厚生労働省の労働基準関係法制研究会で論点が整理され、その後、労働政策審議会労働条件分科会での審議に移っています。分科会では、法定休日・連続勤務規制、勤務間インターバル、つながらない権利といった労働時間法制の具体的課題が資料として示され、議論が重ねられてきました。

経過を追うときに見る場所は決まっています。厚生労働省の労働政策審議会(労働条件分科会)のページに、各回の資料と議事録が公開されます。建議が出て、法案が国会に提出され、成立し、施行日が政令で定まるという順です。いま公開されているのは、その前の段階の資料です。

「改正」という言葉が報道に出ても、この順序のどこにいるかで意味がまったく違います。社内に説明する前に、建議が出ているかどうかを確認してください。

企業が「いま」できること

法改正を待つ必要のない部分があります。

  1. 連続勤務日数を把握する。 上限が法定されるかどうかに関係なく、何日連続で勤務している人がいるかは、勤怠データから出せます。出したことがない会社が多い数字です。
  2. 時間外の連絡ルールを決める。 返信を期待しない時間帯を決める、緊急時の連絡手段を別に用意する。法律の議論とは独立して設計できます。
  3. 勤務間インターバルを試す部署を決める。 全社導入の前に、実際に何時間確保できるかを一部門で確かめると、義務化された場合の準備になります。
  4. 休息が取れていない層を特定する。 平均の残業時間ではなく、分布の端を見ます。月45時間を超える人が何人いるか、その人たちが特定の部署や役割に偏っていないかを確認します。
  5. 副業を認めている場合、労働時間の申告方法を確認する。 通算の取扱いが見直されるかどうかに関係なく、他社での労働時間をどう把握しているかは現行法の運用として必要です。

法改正の話が出ると起きること

人事の立場で注意したいのは、改正の議論が「まだ決まっていないから何もしない」の根拠に使われることです。

連続勤務も、時間外連絡も、休息時間も、現行法のもとで会社が自主的に決められる範囲があります。法律が動くのを待つ理由にはなりません。

逆方向の失敗もあります。確定していないものを「義務化されます」と社内に説明してしまうケースです。あとで内容が変われば、人事からの情報そのものが信用されなくなります。現時点では決まっていないと正確に伝えるほうが、結果的に動かしやすくなります。

外部のセミナーや記事で「2026年改正」という表現を見かけたときは、何の改正を指しているかを確認してください。育児・介護休業法の改正はすでに施行されており、労働施策総合推進法の改正によるカスタマーハラスメント対策の義務化も2026年10月1日に施行されます。一方で労働基準法の改正は未確定です。同じ「改正」でも段階がまったく違います。

すでに確定している改正もあります。育児・介護休業法は2025年4月と10月に段階的に施行されており、こちらは対応が必要です。内容は子の看護等休暇とはと介護休暇とはで扱っています。

長時間労働とハラスメントは同じ場所で起きる

分科会が扱っているのは労働時間の量ですが、現場で問題になるのは量と伝え方の組み合わせです。業務量が処理できない水準のまま早く帰るよう求められれば、時短ハラスメントになります。休息時間中の連絡が繰り返し、執拗であれば、パワハラの判断要素に入ります。

判断の手順はハラスメントのグレーゾーンとはで扱っています。

Floraの支援:休息が取れていない層を先に見る

残業時間の平均は、実態を隠します。全社平均が下がっていても、一部の層が連続勤務と短い休息を抱えたままということは珍しくありません。

FloraのWellflowは、従業員の状態を把握する調査と、管理職向けの研修を提供しています。法改正の内容が固まる前に、自社のどこに負荷が寄っているかを確認しておくと、義務化されたときの対応が速くなります。

まとめ

労働基準法の改正は労働政策審議会労働条件分科会で審議中で、2026年9月時点で法律は成立しておらず、施行日も決まっていません。連続勤務規制、勤務間インターバルの義務化、つながらない権利、副業の労働時間通算の見直しは、いずれも検討段階です。

勤務間インターバルだけは、現在も労働時間等設定改善法の努力義務として存在します。それ以外に新たな義務は発生していません。ただし、連続勤務日数の把握も時間外連絡のルールも、法改正を待たずに着手できます。

よくある質問