柔軟な働き方を実現するための措置とは|5つの選択肢と2025年10月の義務

2026年 9月 28日

柔軟な働き方を実現するための措置とは、3歳から小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者について、事業主が5つの選択肢のうち2つ以上を選んで講じなければならない措置のことです。2025年10月1日から施行されています。

労働者は、事業主が講じた措置の中から1つを選んで利用できます。会社が2つ以上用意し、本人が1つ選ぶ、という構造です。用意する側と選ぶ側で数が違う点が、この制度の特徴です。

この記事では、5つの選択肢それぞれの要件、あわせて義務化された個別周知・意向確認、そして3歳未満の短時間勤務制度との関係を整理します。

(出典:厚生労働省「育児・介護休業法 改正ポイントのご案内」令和7年4月1日から段階的に施行)

柔軟な働き方を実現するための措置、5つの選択肢と要件

選択肢要件
①始業時刻等の変更1日の所定労働時間を変更しない。フレックスタイム制、または始業・終業時刻の繰り上げ・繰り下げ(時差出勤)
②テレワーク等1日の所定労働時間を変更せず、月に10日以上利用できるもの
③保育施設の設置運営等保育施設の設置運営その他これに準ずる便宜の供与(ベビーシッターの手配および費用負担など)
④養育両立支援休暇の付与1日の所定労働時間を変更せず、年に10日以上取得できるもの
⑤短時間勤務制度1日の所定労働時間を原則6時間とする措置を含むもの

②と④については、原則として時間単位で取得できるようにする必要があります。半日単位までの設計では要件を満たしません。

①②④に共通しているのが「1日の所定労働時間を変更しない」という条件です。つまり5つのうち3つは、労働時間を減らさずに柔軟性を上げるという設計になっています。短くするのは⑤だけです。

措置を選ぶ際には、過半数組合等からの意見聴取の機会を設ける必要があります。人事だけで決めて通知する形にはできません。聴取した内容は、選んだ理由を説明する材料にもなります。

3歳未満の短時間勤務制度との関係

混同しやすいので整理します。

対象となる子内容
短時間勤務制度(従来からの義務)3歳未満1日の所定労働時間を原則6時間とする措置
柔軟な働き方を実現するための措置(2025年10月から)3歳から小学校就学前5つのうち2つ以上

3歳未満は短時間勤務制度が義務、3歳から就学前は5つのうち2つ以上、という二段構えです。3歳を境に、会社が用意すべきものが変わります。

なお2025年4月には、3歳未満の短時間勤務制度が困難と認められる業務に従事する労働者への代替措置に、テレワークが追加されました。代替措置は、短時間勤務制度を講ずることが困難と認められる具体的な業務があり、その業務に従事する労働者がいる場合に、労使協定を締結して除外規定を設けたうえで講じるものです。

あわせて、育児のためのテレワーク導入は、3歳未満の子を養育する労働者について事業主の努力義務になっています。

個別周知・意向確認の時期が決まっている

措置を用意するだけでは足りません。3歳未満の子を養育する労働者に対して、子が3歳になるまでの適切な時期に、事業主は個別に周知と意向確認を行わなければなりません。

周知の時期は、子が3歳の誕生日の1か月前までの1年間と定められています。条文の書き方では、1歳11か月に達する日の翌々日から2歳11か月に達する日の翌日までです。

周知する事項は3つです。事業主が選択した対象措置(2つ以上)の内容、対象措置の申出先、そして所定外労働(残業免除)・時間外労働・深夜業の制限に関する制度です。

方法は面談、書面交付、FAX、電子メール等のいずれかで、面談はオンラインでも構いません。FAXと電子メールは労働者が希望した場合に限られます。

そして利用を控えさせるような個別周知と意向確認は認められません。制度を説明しながら「前例がない」と添えるような運用は、義務を果たしたことになりません。

復帰面談とは別に運用が要る

この時期の指定が実務上の難所です。育休からの復帰面談は子が1歳前後で行われることが多く、周知の窓(1歳11か月〜2歳11か月)とずれます。

復帰面談でまとめて説明して終わり、にはできません。子の年齢をトリガーにした個別の案内を、別に組む必要があります。対象者を抽出する仕組みがないと、実施漏れが出ます。人事システムから子の生年月日を条件に抽出できるかを、先に確認しておいてください。

選ぶときの考え方

2つ以上を選ぶとき、何を基準にするか。実務としては次の順で考えると決まります。

  1. 業務の性質で絞る。 現場勤務が中心の職場では②テレワーク等が成立しません。逆にデスクワーク中心なら①と②で足ります。
  2. すでにあるものを数える。 フレックスタイム制や時差出勤をすでに導入していれば、①は実質的に満たしています。新規に作るのは1つで済む場合があります。
  3. 時間を減らす選択肢を1つは残すか決める。 ⑤短時間勤務制度を入れないと、労働時間を短くする選択肢が本人に残りません。①②④はいずれも所定労働時間を変えない設計です。
  4. ④養育両立支援休暇を入れる場合は、有給か無給かを決める。 年10日以上、時間単位で取得できることが要件です。有給とした場合、両立支援等助成金の柔軟な働き方選択制度等支援コースの対象になり得ます。
  5. 既存の休暇制度と名前を分ける。 ④は子の看護等休暇とは別の制度です。同じ「子どものための休暇」に見えるため、社内で混同されます。取得事由も日数の枠も別であることを、規程と案内の両方で区別してください。

よくある選び方の誤り

すでにある制度を数え直さずに、新しく2つ作る。 フレックスタイム制や時差出勤が就業規則にあれば、①は満たしている場合があります。棚卸しを先にしてください。

全社一律で決めて、現場の業務と合わないまま通知する。 過半数組合等からの意見聴取が求められているのは、この形を避けるためです。製造現場と本社で成立する選択肢は違います。

⑤短時間勤務制度を外す。 ①②④はいずれも所定労働時間を変えません。⑤を入れない構成にすると、労働時間そのものを短くしたい人の選択肢がなくなります。3歳未満の短時間勤務から連続して使えなくなる点も、本人から見ると大きな変化です。

残業免除の対象も広がっている

柔軟な働き方の措置とあわせて押さえておきたいのが、所定外労働の制限(残業免除)です。2025年4月1日から、請求できる労働者の範囲が3歳未満の子を養育する労働者から、小学校就学前の子を養育する労働者に広がりました。

個別周知の周知事項に「所定外労働(残業免除)・時間外労働・深夜業の制限に関する制度」が含まれているのは、このためです。柔軟な働き方の措置を1つ選ぶことと、残業免除を請求することは別の話で、両方を使えます。

実務では、ここが説明から抜けやすいところです。「5つのうち1つを選ぶ」とだけ伝えると、それで打ち止めのように受け取られます。残業免除は別枠で請求できることを、同じ案内の中に入れてください。

制度を入れたあとに見ること

選択肢を用意して周知すれば義務は果たせますが、そこで終わると本来の目的から外れます。

見るべきは利用者の偏りです。5つのうち特定の1つに集中している場合、他の選択肢が実質的に使えない状態になっている可能性があります。上司の承認が要る、前例がない、対象業務から外れている、といった理由で選べなくなっていないかを確認してください。

もうひとつ確認したいのが、意向確認の回答と実際の利用が一致しているかです。周知・意向確認の場で「利用したい」と答えた人のうち、実際に利用を開始した人がどれだけいるか。差が大きければ、申出の手続きか、上司との間のどこかで止まっています。義務として記録を残す必要がある項目なので、集計の手間はかかりません。

3つめは利用期間の長さです。制度が使えるのは小学校就学前までですが、実際の利用が数か月で終わっているなら、続けられない事情があります。

もうひとつは周囲への影響です。柔軟な働き方を選んだ人の業務を誰が引き取るかを設計していない職場では、不公平感が生まれます。立て直し方は時短・育休の「しわ寄せ」で不公平感が出る職場の立て直し方にまとめました。

時短を選んだ人のキャリアがどうなるかは育休復職後に女性のキャリアが止まる仕組みで扱っています。2歳未満の時短には育児時短就業給付金があり、同じ2025年4月の改正で子の看護等休暇も変わりました(子の看護等休暇とは)。

Floraの支援:選ばれない選択肢を見つける

2つ以上を用意することは、仕組みとして対応できます。難しいのは、用意した選択肢が実際に選べる状態になっているかどうかです。

FloraのWellflowは、従業員向けの相談支援と管理職向けの研修を提供しています。制度が使われない理由は多くの場合、制度の内容ではなく職場の受け止め方にあります。そちらを動かす部分を支援できます。

まとめ

柔軟な働き方を実現するための措置は、3歳から小学校就学前の子を養育する労働者について、5つの選択肢のうち2つ以上を講じる義務です。2025年10月1日から施行され、労働者はそのうち1つを選んで利用します。

5つのうち①②④は所定労働時間を変えない設計で、短くするのは⑤の短時間勤務制度だけです。措置を選ぶ際は過半数組合等からの意見聴取が必要で、個別周知は子が3歳の誕生日の1か月前までの1年間に行わなければなりません。

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