コーポレートガバナンス・コード2026年改訂と人的資本|原則2-2の「測定可能な目標」

2026年 9月 25日

コーポレートガバナンス・コードの2026年改訂とは、2026年7月21日に金融庁と東京証券取引所が公表した改訂版コードのことです。上場会社は、遅くとも2027年7月末日までに、改訂版コードに関する事項を記載したコーポレート・ガバナンス報告書を提出する必要があります。

この改訂で、中核人材への登用等における多様性は、従来の補充原則から原則2-2に置き直されました。求められるのは、考え方と「自主的かつ測定可能な目標」を決定し、その状況を開示することです。決めるのは取締役会ですが、目標に置ける数字を用意するのは人事です。

この記事では、CGコードとも呼ばれるコーポレートガバナンス・コードの2026年改訂が人的資本について何を求めているのかを条文から確認し、原則2-2の「測定可能な目標」に何を置けるのか、そして毎年何を追うことになるのかを整理します。

コーポレートガバナンス・コード2026年改訂で何が変わったか|人的資本に関わる2つの原則

改訂版コードは、従来の基本原則・原則・補充原則という三層構造から、基本原則4・原則26の合計30項目に整理されました。コード自身が「従前の補充原則を再整理し、ガバナンスの中核となる箇所を原則に格上げする一方、コード内の他の箇所又は法令等との重複がある箇所等を削除する」と説明しています。これが「プリンシプル化」「スリム化」と呼ばれている部分です。

削られた記述の多くは解釈指針に移りました。解釈指針について、コードは「コンプライ・オア・エクスプレインの対象ではないが、各原則についての実質的な対応を支援する役割を担う」としています。対象から外れたことと、重要でなくなったことは別だとも明記されています。

人事に関係するのは次の2つです。

原則求められること
原則2-2(社内の多様性の確保)中核人材への登用等における多様性の考え方と、自主的かつ測定可能な目標の決定・開示。人材育成方針と社内環境整備方針を、実施状況と併せて開示
原則4-1(取締役会の役割・責務Ⅰ)成長投資(設備・研究開発・人的資本・知的財産等)や経営資源の配分について、具体的に何を実行するのかを説明

(出典:株式会社東京証券取引所「コーポレートガバナンス・コード」2026年7月21日/金融庁・東京証券取引所「成長投資の促進に向けたコーポレートガバナンス・コードの改訂について」2026年7月21日)

原則2-2:中核人材の多様性と「測定可能な目標」

条文はこうなっています。

> 上場会社は、ジェンダーや国際性、経歴(中途採用を含む)、年齢、文化的背景やこれらに限られない観点から、中核人材への登用等における多様性の確保についての考え方と自主的かつ測定可能な目標を決定するとともに、その状況を開示すべきである。 > また、多様性の確保に向けた人材育成方針と社内環境整備方針をその実施状況と併せて開示すべきである。

読むべき語は3つです。中核人材への登用等、自主的かつ測定可能な目標、そして実施状況と併せて。

「中核人材への登用等」は管理職に限りません。登用の手前にある選抜や配置も含めて読める書き方です。「自主的」とは、水準を外から与えられないという意味で、逆にいえば自社で決めた以上は説明を求められます。そして「実施状況と併せて」は、方針を書いて終わりにできないということです。毎年、同じ物差しで測った数字が要ります。

女性役員比率30%のような外部目標との関係は「女性役員比率30%目標とは」で扱っています。

「測定可能な目標」に何を置くか

女性管理職比率だけを目標に置くのが、いちばんよくある形です。測定可能ではありますが、動かし方が見えないという弱点があります。比率は結果であって、手を入れる場所ではないからです。

CapLeadのデモで使っているサンプルデータ(架空のグループ「サンライズHD」12社・従業員8,420名。実在の企業のデータではありません)で見てみます。

段女性比率
主任・担当45.3%
係長・課長代理24.1%
管理職(課長級以上)9.8%

管理職比率は9.8%です。ここだけを目標にすると、打ち手は「管理職に登用する」に寄ります。しかし段ごとに並べると、いちばん大きく落ちているのは主任・担当から係長・課長代理への段で、45.3%から24.1%へ21.2ポイント下がっています。管理職のひとつ手前ではなく、ふたつ手前です。

同じサンプルデータで、この段の5年昇進率は女性41.6%、男性63.9%、差は22.3ポイントあります。在籍者の構成ではなく、上がる確率そのものに差が出ている形です。

だとすれば、測定可能な目標として置けるのは比率だけではありません。

  • 段ごとの候補者プールの人数と女性比率
  • 段ごとの男女別昇進率
  • 段ごとの滞留年数

この3つは、在籍者名簿の等級・性別・勤続年数から出せます。新しい調査は要りません。段の並べ方は「女性管理職パイプラインの可視化」に、指標の選び方は「女性活躍推進のKPI設計」にまとめました。目標値から必要な登用ペースを逆算する場合は「女性管理職比率 目標達成シミュレーター」が使えます。

実施状況として毎年出すことを考えると、指標は少ないほうが続きます。指標名・分母・時点・抽出条件を決めて版で固定し、翌年も同じ物差しで出せる形にしてください。定義が動くと、前年比が施策の効果なのか集計の違いなのか分からなくなります。分解の組み立て方は「人事KPIツリーのつくり方」で扱っています。

原則4-1:人的資本は成長投資として説明する

もうひとつが原則4-1です。取締役会は、経営戦略や経営計画の策定・公表に当たって「成長投資(設備・研究開発・人的資本・知的財産等の無形資産への投資等)や事業ポートフォリオの見直し等の経営資源の配分等に関し具体的に何を実行するのかについて説明を行うべきである」とされています。

人的資本が、設備投資や研究開発と並ぶ成長投資として条文に書かれた、という点が実務上の変化です。研修費の総額を書くだけでは「具体的に何を実行するのか」の説明になりません。どの層に、何のために配分し、その結果を何で見るのかまでが問われます。原則2-2で決めた目標と、ここでの説明がつながっていないと、報告書の中で話が合わなくなります。

逆算すると、2027年7月末日のコーポレート・ガバナンス報告書に向けて、人事側の準備はこうなります。

  1. どの段に課題があるかを数える。 段ごとの人数・比率・昇進率。ここは既存データで出せます。
  2. 目標を決める。 比率だけでなく、動かせる単位の指標を含める。決めるのは取締役会なので、選択肢と根拠を持ち込む形になります。
  3. 定義を固定する。 指標名・分母・時点・抽出条件を書き出し、決めた日付を残す。
  4. 実施状況の報告経路を決める。 誰が、いつ、どのデータから出すか。年1回の報告書のためだけに動かすと、毎年同じ苦労をします。

グループ各社に散在するデータを一つの基盤で扱い、指標ごとの定義を版で固定して、元ファイルの行まで遡れる出典を残す仕組みとしては「CapLead」があります。連結での集計や、開示先ごとに定義が割れる問題まで含めて扱う領域です。

よくある失敗

  • 比率だけを目標に置く。 測定可能ではありますが、結果指標なので打ち手に落ちません。段ごとの昇進率や候補者プールを併せて置いてください。
  • 方針を書いて実施状況を用意しない。 原則2-2は「実施状況と併せて」開示すべきとしています。毎年同じ物差しで測った数字が要ります。
  • 定義を決めずに数字を出す。 分母や時点が年によって変われば、前年比は説明できません。
  • 原則2-2と原則4-1を別々に書く。 多様性の目標と、人的資本への投資の説明は、同じ人材戦略の表と裏です。報告書の中で整合しないと、そこを突かれます。
  • 解釈指針を無視してよいものと読む。 コンプライ・オア・エクスプレインの対象ではありませんが、コードは「当該改訂後にはその重要性が失われたと考えることは適切ではない」と明記しています。

Floraの支援:目標に置ける数字を、先に用意する

Flora株式会社の「ダイバーシティデータプログラム」は、企業の人事データを分析し、女性管理職比率が上がらない要因が採用・配置・評価・昇進・退職のどの段階にあるかを特定するコンサルティングです。原則2-2でいう「測定可能な目標」を決めるには、まずどの段が細いのかを知る必要があります。段ごとの人数を数えるところからご相談ください。

まとめ

コーポレートガバナンス・コードは2026年7月21日に改訂され、基本原則4・原則26の30項目に整理されました。コーポレート・ガバナンス報告書の提出期限は、遅くとも2027年7月末日です。

中核人材への登用等における多様性は原則2-2に置かれ、考え方と「自主的かつ測定可能な目標」の決定・開示、そして人材育成方針・社内環境整備方針を実施状況と併せて開示することが求められます。原則4-1では、人的資本が成長投資のひとつとして条文に書かれました。

人事の仕事は、目標に置ける数字を用意することです。比率は結果なので、段ごとの候補者プールと男女別昇進率をあわせて持つ。そして定義を固定して、翌年も同じ物差しで出せるようにする。この2つが、2027年7月末日に向けた準備の中身になります。

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